犬の皮膚糸状菌症について|人間にもうつる皮膚の感染症
「犬から人間に感染する皮膚病ってあるの?」
犬の飼い主様であれば一度はそんなふうに考えたことがあるのではないでしょうか?
実は犬の有名な皮膚病である皮膚糸状菌症は人間にもうつります。
今回はそんな皮膚糸状菌症について詳しく解説し、どのように管理すれば正しく治療できるかを解説していきます。
📍 目次 ▼ 皮膚糸状菌症とは |
皮膚糸状菌症とは
皮膚糸状菌症は真菌(カビ)の感染症です。
原因となる真菌はおもにMicrosprum sppとTrichophyton sppの2種類です。
皮膚糸状菌が感染した毛との接触で感染することが多く、皮膚糸状菌症に感染した猫(特に野良猫)との接触や、動物病院、トリミングサロン、ペットホテルで皮膚糸状菌症に感染した毛と接触することで感染します。
土に皮膚糸状菌が存在することもあるため、穴を掘る癖がある犬が皮膚糸状菌に感染することもありますね。
ハムスターなどのげっ歯類やうさぎは、症状がなくても皮膚糸状菌を持っている可能性があり、皮膚糸状菌の感染源になることがあるため、注意が必要です。
皮膚糸状菌症は幼若齢や高齢の犬の場合は感染のリスクが高まります。
また
- ヨークシャー・テリア
- ペキニーズ
- ジャックラッセルテリア
では重症化しやすい傾向にあります。
冒頭でもお伝えしたように、皮膚糸状菌症の大きな特徴に、人間にも感染しかゆみや皮膚炎を生じることがあるという点がありますね。
人間に感染するとドーナツ状の赤い発疹を生じることが一般的です。
皮膚糸状菌症の症状
皮膚糸状菌症の皮膚の症状は
- 左右非対称に発症する
- 症状が出ている部分と出ていない部分の境界がはっきりしている
- 脱毛が目立つ
のが特徴的です。
それ以外にも赤み、フケ、かさぶたなどが認められることもありますね。
初期症状は、足先や顔など皮膚糸状菌と直接接触しやすい末端部に出る傾向にあります。
その後、症状が出た部位を舐めたりすることで他の部位へ症状が拡大します。
かゆみの程度は様々ですが、我慢できないほど強いかゆみを伴うことはまれです。
皮膚糸状菌にだけ現れる症状はないため、症状だけでは皮膚糸状菌と診断することは困難ですね。
皮膚糸状菌症の診断
ここまで皮膚糸状菌症は症状から診断することが難しいというお話ししました。
ここからは皮膚糸状菌をどのように診断したら良いかについて解説していきます。
皮膚糸状菌の検査には以下のものがあります。
- ウッド灯検査
毛にウッド灯という特殊なライトを当てる検査です。
感染した毛は青リンゴ色に発色しますが、その検出率は50%程度なので完璧な検査とは言えません。 - 毛検査
毛を採取して顕微鏡で観察する検査です。
最も検出率の高い検査です。 - 真菌培養検査
真菌を培養する検査です。
補助的な検査として用いられます。
ここでご紹介したように完璧な検査はありません。
それぞれ組み合わせながら総合的に考える必要がありますね。
皮膚糸状菌症の治療
皮膚糸状菌症の治療は状況に応じて変わります。
一般的な治療は以下の通りです。
- 抗真菌薬の内服
最も一般的な治療です。副作用に注意しながら投与していきます。 - 抗真菌薬の外用薬(クリームやローション)
抗真菌薬の内服の補助的な役割があります。 - 抗真菌成分配合のシャンプー
ミコナゾールやクロルヘキシジンなどの抗菌成分が配合されたシャンプーが皮膚糸状菌症に対しては有効と言われています。 - 毛刈り
皮膚糸状菌症は毛に感染する感染症なので、毛を短くカットすることで治療を補助することができます。短くカットしすぎて皮膚に傷がつくと、傷ついて部位からさに深いところまで感染する可能性があるため注意が必要です。
飼い主や同居動物に皮膚糸状菌を感染させないために
皮膚糸状菌症は非常に感染力の高い感染症です。
飼い主様や同居動物と同時に発症することもしばしば起こります。
皮膚糸状菌が感染した毛が環境中に残った場合、1年間感染力を保つこともあるという恐ろしいデータもあります。
もし皮膚糸状菌症に感染している犬を飼われている場合は、感染拡大を防ぐために徹底的に対策をしなければいけませんね。
感染拡大対策には以下のものがあります。
- ゴシゴシと激しくシャンプーしない
激しくすると環境中に皮膚糸状菌が散布されることがあります。 - 抜け毛は掃除機で清掃する
床だけではなく、壁、天井、窓台、通風口、エアコンフィルターなども清掃しましょう。
毛のついたカーペットや寝具は廃棄しましょう。 - 週に1回のペースで消毒する
次亜塩素水、加速化過酸化水素水が有効とされています。 - 治療が完了するまで移動を制限する
感染拡大対策をしていても感染拡大してしまった場合は、病院や動物病院を受診しましょう。
まとめ
皮膚糸状菌症が人間に感染する病気と聞くととても怖いですよね。
しかし、治療や感染拡大対策には様々なものが存在しています。
状況に応じて適切な方法を選択できれば完治を目指すことができ、感染拡大を防ぐこともできます。
しっかりと皮膚糸状菌症について理解し、愛犬や自分の身を守りましょう。
当院では皮膚科に力を入れています。
皮膚糸状菌症に対するアドバイスも行っていますので、お困りの方はいつでもご相談ください。
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