
「最近、うちの猫の口がなんだか臭い」
「ごはんの後とは違う嫌な臭いがずっと続いている」
こうした変化を感じたことのある飼い主様は多いのではないでしょうか。
猫の口臭は、食べ物による一時的なものから、歯周病や腎臓病といった治療が必要な病気のサインまで原因はさまざまです。
猫は体調が悪くても隠そうとする習性があるため、飼い主様が
「口が臭い」
と感じたことが病気の早期発見につながるケースも珍しくありません。
この記事では、猫の口臭で考えられる原因と病気、ご自宅でのチェック方法まで獣医師がわかりやすく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、猫の口臭に関わる病気に気づくきっかけにしていただけますと幸いです。
| 📍 目次 ▼ 猫の口臭をチェックするポイント ▼ 猫の口臭の原因は? ▼ 猫の口臭が気になったら動物病院で行う検査 ▼ 猫の口臭の予防と早期発見のために飼い主様ができること ▼ まとめ |
猫の口臭をチェックするポイント

愛猫の口臭が気になったとき、飼い主様にまず確認していただきたいのは「臭いの種類」と「臭いがどのくらい続いているか」の2点です。
ごはんを食べた直後だけ少し臭う程度であれば、大きな心配はいらないケースがほとんどです。
しかし、臭いが何日も続いたり、日に日に強くなる場合は注意しましょう。
臭いの種類によっても、猫の体の中で起きている異変をある程度推測できます。
たとえば、慢性腎臓病にかかった猫の口からはアンモニアに似た刺激臭が感じられることがあり、糖尿病が進行した猫の場合は甘酸っぱい独特の臭いが出る場合もあります。
口臭は口の中だけでなく、内臓の健康状態を映し出すバロメーターとして重要です。
口臭以外にも、飼い主様が猫の口を触ろうとしたときに強く嫌がったり、猫がごはんを片側の歯だけで噛んでいたりする場合は口の中に痛みがあるサインかもしれません。
毎日そばにいる飼い主様だからこそ気づける変化を大切にして、臭いの種類や期間をメモしておくと、受診時に獣医師へスムーズに伝えることができます。
猫の口臭の原因は?
猫の口臭の原因は、大きく分けて
- 食べ物
- 乾燥
- 口の中の病気
- 内臓の病気
の4つに分類できます。
ここでは、それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。
食べ物
猫の口臭には、病気ではなく食べ物が関係している場合もあります。
こうした原因による口臭は一時的なものであり、日々の生活を見直すことで改善が期待できます。
ウェットフードや魚が主原料のフードは香りが強いため、猫が食べた直後はどうしても口臭を感じやすくなることが多いです。
食べ物が原因の場合は、時間が経てば自然におさまるケースがほとんどです。
口の乾燥
もうひとつ見落とされがちな原因が、口の中の乾燥です。
猫の唾液には細菌の増殖を抑えて口の中を清潔に保つ働きがあります。
しかし、飲水量が少なかったり、脱水状態になると唾液が減り、細菌が繁殖しやすい環境になってしまいます。
猫はもともと砂漠で暮らしていた祖先の名残で飲水量が少なく、飼い主様が水分不足に気づきにくいため注意が必要です。
猫の飲水量を増やすには、循環式の給水機の設置やウェットフードを取り入れることが効果的です。
口臭の原因になる口の病気
猫の口臭でもっとも多い原因は、口の中の病気です。
猫は口を触られることを本能的に嫌がるため、飼い主様が口の中の異常に気づくのが遅れやすく、口臭だけが最初の手がかりになることも珍しくありません。
猫の口の病気には、どんなものがあるかみていきましょう。
歯周病
猫の口臭の原因として頻度が高い病気が歯周病です。
猫の歯に歯垢がたまると、やがて歯石に変わり、歯石のまわりで細菌が増殖して歯ぐきや骨に炎症を引き起こします。
歯周病の場合、歯石自体が悪臭を発するため、重症になるほど臭いは悪化します。
歯周病が進行すると、現れる症状は以下の通りです。
- 歯に大量の歯石がつく
- 歯ぐきから出血する
- 歯が抜ける
- ごはんを食べるときに痛がる仕草を見せる
猫の歯周病は年齢を重ねるほど発症率が上がるため、定期的に口の中をチェックする習慣が欠かせません。
歯肉口内炎
歯肉口内炎は、口の粘膜に炎症を起こし、口の中が真っ赤に腫れてしまう病気です。
原因は不明とされていますが、猫カリシウイルスや猫免疫不全ウイルス(FIV)などの感染がきっかけで発症することがあると考えられています。
歯肉口内炎はどんな年齢の猫でも起こりうるため、若齢の猫での発症も少なくありません。
口臭以外にも、非常に強い痛みにより
- よだれが増える
- 前足で口を触る
- ご飯を食べるそぶりをするが食べられない
などの症状がみられます。
口腔内腫瘍
高齢の猫では、口の中に腫瘍ができる場合があります。
猫の口腔内腫瘍は悪性の割合が高く、なかでも扁平上皮癌が代表的な腫瘍です。
腫瘍が大きくなると表面が壊死(組織が腐ってしまうこと)することで、非常に強い臭いが発生します。
口臭以外にも、口からの出血、顔が腫れるといった変化がみられたら、口腔内腫瘍の可能性があります。
口の中の腫瘍は飼い主様が異変に気づいた時点ですでに進行しているケースも多いため、早期発見が大切です。
口臭の原因になる内臓の病気
猫の口の中を確認しても目立った異常が見当たらないのに口臭が強い場合は、内臓の病気が原因となっている可能性があります。
ここでは、口臭の原因になる代表的な病気についてご説明します。
慢性腎臓病
猫の慢性腎臓病では、口臭が代表的な症状のひとつです。
腎臓の働きが低下すると、尿として排出される老廃物が体にたまり、アンモニアのような刺激臭が口臭として現れます。
さらに慢性腎臓病の猫は大量の尿を出すため脱水しやすく、口の乾燥が口臭をさらに悪化させる要因にもなります。
口臭と合わせて猫に以下のような症状がみられる場合は、慢性腎臓病を考えて早めに受診しましょう。
- 水を飲む量が増えた
- 尿の量が増えた
- 食欲が落ちてきた
- 体重が減ってきた
- 毛づやが悪くなった
慢性腎臓病は高齢の猫ほど発症率が高い病気であるため、定期的な血液検査による早期発見が大切です。
肝臓病
肝臓は体の中の老廃物や有害物質を分解・処理する大切な臓器です。
肝機能が低下すると毒素が体内にたまり、その影響が口臭として現れることがあります。
肝臓病による口臭もアンモニアのような刺激臭がすることが多いです。
猫に多い肝臓病には、胆管肝炎などの炎症や、肝リピドーシス(脂肪肝)などがあります。
猫の肝臓病は命に関わることもあるため、早期発見が重要です。
糖尿病
猫が糖尿病にかかると、インスリンの働きが低下して体が糖をエネルギーに変えられなくなります。
すると、糖の代わりに脂肪を分解し始め、その過程で「ケトン体」という物質が増えることで甘酸っぱい独特の口臭につながります。
糖尿病は肥満気味の猫や中高齢の猫に多く、進行すると命に関わる糖尿病性ケトアシドーシスという合併症を招くケースも少なくありません。
猫が大量に水を飲む、食べているのに痩せるといった症状がみられたら、糖尿病に注意しましょう。
便秘・腸閉塞
口と腸はつながっているため、便秘や腸閉塞で腸の中に便がたまることで、口臭が便のような臭いになることがあります。
便秘は加齢や水分不足が原因となるケースが多くみられます。
腸閉塞はおもちゃなどの異物を食べてしまって発症することが多く、放置すると腸が壊死する恐れもある緊急性の高い病気です。
特にひも状の異物は腸を傷つけるリスクが高いため、猫がひもで遊ぶときは飼い主様が必ずそばで見守るようにしましょう。
猫の口臭が気になったら動物病院で行う検査

猫の口臭が気になったときは、動物病院で検査を受けることをおすすめします。
口臭の原因は多岐にわたり、見た目だけで特定することが難しいことも少なくありません。ここでは、動物病院に連れて行った場合、どのような検査をするのかをご説明します。
口の病気が疑われる場合の検査
口の病気が疑われるとき、獣医師はまず猫の口の中をチェックし、
- 歯石の付着
- 歯ぐきの炎症
- 歯のぐらつき
- 出血
- 腫瘍の有無
などを確認します。
ただし猫は口を開けられることを強く嫌がるため、正確に調べるには全身麻酔下で口腔検査や歯科用レントゲン検査を行うことも珍しくありません。
麻酔下の検査では、歯周ポケットの深さを測定したり、レントゲンで歯の根元や顎の骨の状態を確認したりと、意識のある状態では難しい精密な検査が可能になります。
腫瘍が疑わしい場合は麻酔下で、腫瘍の細胞を調べる検査をすることもできます。
内臓の病気が疑われる場合の検査
口の中に目立った異常がなく内臓の病気が疑われる場合、推奨される検査は疑わしい病気により異なります。
腎臓病や糖尿病が疑われる場合は血液検査や尿検査、便秘や腸閉塞が疑われる場合はレントゲン検査やエコー検査など、猫の状態に応じて、検査を組み合わせて診断します。
口臭の背景に隠れた病気を見逃さないよう、口腔内の診察だけでなく全身の状態も含めた総合的な評価が大切です。
猫の口臭の予防と早期発見のために飼い主様ができること
猫の口臭が気になるときは、動物病院で原因を調べることが大切です。
口の中の病気を放っておくと、痛みで猫がごはんを食べられなくなったり、腫瘍が全身に広がって命に関わったりすることもあります。
普段から猫の口の中を観察し、歯ぐきの色や腫れ、出血などの小さな変化に早く気づくことが治療の成功率を高める鍵です。
慢性腎臓病や糖尿病などの内臓の病気は、じわじわと進行する一方で急に悪化することもあります。
早期発見のために、気になる症状がなくても健康診断を受けておくと安心です。
特にシニア期(7歳以降)の猫には、半年に1回程度の健康診断をおすすめします。
また、自宅でのデンタルケアも口臭対策に大切です。
デンタルケアとしては、歯ブラシでの歯磨きがもっとも効果的な予防法ですが、いきなり始めると嫌がる猫がほとんどです。
まずは口元を指で触ることから始め、慣れてきたら歯ブラシへと段階的に進めましょう。
歯垢が歯石になるとご家庭で取り除くことはできないため、歯垢のうちに取り除くことが大切です。
まとめ
猫の口臭は体の健康を知るためにとても重要です。
口臭がいつもと違う、最近臭うなどのサインに気づいたら、いつも通りに見えても、実は歯周病で食事のたびに痛みを感じていたということがあるかもしれません。
また、腎臓病や糖尿病などの全身疾患が原因となっている場合もあります。
「いつもと臭いが違う」
と感じたら、動物病院で原因を調べることがおすすめです。
当院では口腔内の診察に加え、さまざまな検査を組み合わせて口臭の原因を詳しく調べています。
気になる症状がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
よくある質問(Q&A)
Q.子猫でも口臭が強くなることはありますか?
A.はい、子猫にも口臭がみられることがあります。
強い臭いが何日も続くときは、猫カリシウイルス感染症や歯肉炎などの可能性が考えられます。
子猫の食欲が落ちたりよだれが増えたりしている場合は、早めに動物病院を受診してください。
Q.サプリメントやデンタルガムだけで猫の口臭は改善できますか?
A.デンタルサプリメントや猫用のデンタルおやつは口の中の環境を整える補助にはなりますが、歯周病などの病気そのものを治すことはできません。
猫の口臭が続いている場合は、まず動物病院で原因を調べたうえで、獣医師の指導のもと自宅ケアを併用する形が望ましいです。
Q.猫は全身麻酔をかけて歯石除去をしても大丈夫ですか?
A.全身麻酔には一定のリスクを伴いますが、安全に十分配慮して行われます。
猫の歯石除去や詳しい口腔内検査は猫が動かない状態で行う必要があり、全身麻酔が基本です。
当院では麻酔前に猫の体が麻酔に耐えられる状態かを確認し、麻酔中も心拍数や血圧などを継続的にモニタリングしながら安全性を最優先にして処置を進めております。
Q.猫の口臭と一緒にチェックすべき受診サインは何ですか?
A.猫の口臭に加えて以下のような症状がみられるときは、早めの受診をおすすめします。
- 猫の口臭が数日以上続いている、または急に強くなった
- 猫のよだれが増えた、または口から出血がある
- 猫がごはんを食べにくそうにしている
- 猫が水を飲む量や尿の量が増えた
- 猫の体重が減ってきた、元気や食欲がない
これらの症状は口の中の病気だけでなく、腎臓病や糖尿病などの全身疾患が隠れている場合もあるため、獣医師にご相談ください。
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