犬の副腎皮質機能亢進症について解説|皮膚の異常が病気のサインかも?!
「皮膚炎の治療をしているのになかなか良くならない…」
と治療がうまくいかない時、背景に別の病気が隠れていることがあります。
副腎皮質機能亢進症は犬ではしばしばみられる皮膚症状が見られる内分泌疾患です。
副腎皮質機能亢進症の症状は多岐にわたり、皮膚トラブルがみられることもあります。
今回の記事では犬の副腎皮質機能亢進症について解説します。
犬の皮膚疾患にお悩みの方はぜひ最後までお読みいただき参考にしてみてください。
📍 目次 ▼ 犬の副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)とは |
犬の副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)とは
副腎皮質機能亢進症はクッシング症候群とも呼ばれ、副腎というホルモン分泌を担う器官が過剰に働く病気です。
副腎からコルチゾールというホルモンの一種が過剰に分泌されることで全身に影響を与えます。
コルチゾールには
- 炎症を抑制する作用
- タンパク質を糖に変換する作用
- 免疫を抑制する作用
などさまざまな作用があります。
犬では中齢以降で副腎皮質機能亢進症の発症率が高く、8歳以上で発症することが多いです。
副腎皮質機能亢進症の原因
副腎の働きは下垂体により調節されており、その経路のどこに異常が生じるかで原因が2つに分類されます。
さらに飲み薬が原因で副腎皮質ホルモンが過剰な状態になることもあります。
下垂体(脳)が原因
犬の副腎皮質機能亢進症の8〜9割が下垂体性です。
下垂体からはACTHと呼ばれる副腎からのホルモン分泌を促進するホルモンが分泌されます。
下垂体に腫瘍などの異常が生じるとACTHの分泌が増加することで二次的に副腎からのホルモン分泌が過剰になります。
副腎が原因
副腎自体の機能異常も原因の一つです。
副腎に腫瘍が発生したり、異常に肥大することでコルチゾールが過剰に産生されます。
副腎の腫瘍は5割が良性、5割が悪性と言われています。
副腎の腫瘍は付近の血管に浸潤することもあるため注意が必要です。
ステロイドの薬が原因
長期にわたりステロイドのお薬を服用していると副腎皮質機能亢進症のような症状を示すことがあります。
薬をやめることで症状が改善することが多いです。
副腎皮質機能亢進症の症状
副腎皮質機能亢進症によるホルモンの分泌異常は全身に影響を与え、さまざまな症状を引き起こします。
副腎皮質機能亢進症によって免疫力の低下も生じるため膀胱炎などの感染症を伴うことがあります。
また、糖尿病が併発していることもあるので注意が必要です。
多飲多尿
副腎皮質機能亢進症を発症した9割以上の犬でみられると言われています。
1日に飲む水の量が体重1キロ当たり100mlを超えてくると要注意です。
水を飲む量が増加するとともに尿量の増加もみられます。
食欲が増す
発症初期に食欲増加がみられることが多いです。
いつもよりも食欲が増し、体重増加がみられます。
筋肉が落ちてお腹が膨れてくる
コルチゾールにはタンパク質を分解し、糖に変換する作用があります。
この作用が過剰になると筋肉中のタンパク質が分解されて筋肉が落ちることが多いです。
さらに肝臓の腫大や内臓脂肪の増加によりお腹が膨れてきます。
皮膚トラブル
副腎皮質機能亢進症の症例の約8割で皮膚症状がみられると言われているほど重要な症状の1つです。
皮膚においてさまざまな症状が起こります。
皮膚が薄くなる
皮膚が薄くなり血管が透けて見えることもあります。
皮膚が薄くなりすぎると裂けてしまうこともあり非常に危険です。
脱毛
徐々に進行し、かゆみの無い左右対称性の脱毛が特徴です。
石灰沈着
皮膚にカルシウム成分が沈着する特徴的な病変がみられます。
皮膚がゴツゴツと硬くなり、完治に至るまで半年以上かかることもあります。
色素沈着
お腹の皮膚に黒い色素が沈着することが多いです。
ホルモン分泌の異常の影響でメラニン産生が増加することで起こります。
皮膚の感染性疾患の併発
皮膚の免疫機能が障害されるため、皮膚の感染性疾患に注意が必要です。
皮膚炎に対する治療を行っても反応が悪い場合、副腎皮質機能亢進症による免疫力低下が原因であることもあります。
これらの皮膚症状が混在して生じることが多く、犬の副腎皮質機能亢進症は皮膚疾患と関係が深いと言えるでしょう。
副腎皮質機能亢進症の診断
特徴的な症状を聴取し、副腎皮質機能亢進症が疑わしい場合は
- 血液検査
- 尿検査
- 画像検査
などを行います。
検査所見から副腎皮質機能亢進症であるかを判断するとともに下垂体が原因なのか副腎が原因なのかを鑑別します。
血液検査
副腎皮質機能亢進症の診断には特殊な血液検査も必要です。
ACTH刺激試験やデキサメタゾン抑制試験と呼ばれる血液検査で血液中のコルチゾール濃度を測定し、問題部位を鑑別します。
尿検査
尿中に含まれるコルチゾールを測定します。
副腎皮質機能亢進症の犬では尿量が増えるため尿比重が低下することが多いです。
エコー検査
左右の副腎の大きさを確認します。
副腎は小さい器官であるためレントゲン検査では分かりません。
エコーを用いて副腎の腫大がないかどうかを判断します。
CT・MRI検査
下垂体腫瘍が疑わしい場合はCT・MRI検査での診断に進む場合もあります。
副腎皮質機能亢進症の治療
副腎皮質機能亢進症の治療は基本的に生涯続くものです。
併発している他の疾患についても並行して治療を行います。
飲み薬での治療
飲み薬によりコルチゾールの分泌を抑制することで治療を行います。
定期的にコルチゾールが適正量に保たれているかを検査し、薬用量の調整が必要です。
外科手術
副腎腫瘍が原因の場合は外科的な摘出を行う場合もあります。
ごく一部の動物病院では下垂体の腫瘍に対して外科手術や放射線治療を行っています。
飲み薬で良好にコントロールできれば皮膚症状も改善することが多いです。
しかし、皮膚の病変が進行してしまうと治癒が難しい場合もあります。
早期に病気を発見し、治療することが皮膚トラブルを最小限に抑える重要なポイントです。
まとめ
犬の副腎皮質機能亢進症は一度発症すると完治の難しい病気です。
しかし、早期から治療を行うことで全身への影響を最小限にとどめ、良好にコントロールすることが可能です。
当院では皮膚症状の観点からも副腎皮質機能亢進症にアプローチし、診断、治療を行っております。
「もしかして副腎皮質機能亢進症では?」
と不安にお思いの方は当院までご相談ください。
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