犬のマラセチア性外耳炎について解説|カビによる外耳炎とは?
外耳炎は、動物病院で非常によく相談される病気のひとつです。
愛犬がお家で耳を痒がる姿を見たことがある方は多いのではないでしょうか。
ひとことで外耳炎と言っても原因がいくつかあります。今回は外耳炎の中でも、特にメジャーな原因である、マラセチアによる外耳炎について解説します。
外耳炎を繰り返している犬の家族の方だけでなく、犬を飼っている方はぜひ外耳炎について詳しくなって、愛犬の健康管理に活かしましょう。
📍 目次 ▼ マラセチアとは |
マラセチアとは
マラセチアとは健康な犬の皮膚に常在する真菌、いわゆるカビの一種です。通常の状態では、マラセチアが炎症を起こすことはありません。マラセチアは過剰に増えることで皮膚に炎症を起こす原因となります。
マラセチアによる皮膚の炎症は、菌の成分や真菌の出す代謝産物そのものやそれらに対するアレルギー反応です。
これが耳で起こるのがマラセチア性外耳炎です。
マラセチアには、皮脂を好むという特徴があります。そのため、垂れ耳の犬や元々皮膚が脂っぽい犬の、特に皮脂の溜まりやすい耳道で炎症が起こることが多いです。
原因
通常は外耳炎を起こすことのないマラセチアの異常増殖は、どのような状況で発生するのでしょうか。
マラセチアが増える時にはほとんどの場合、その背景に何らかの原因があります。
構造的な要因
マラセチアの皮脂を好む特徴は、垂れ耳の犬にとっては非常に悪条件です。
シーズーやトイプードルなどの犬種では、垂れた耳が耳の穴に蓋をしてしまうため、耳道の通気性が悪くなります。
そのためこのような犬種では、構造的にどうしても外耳炎を繰り返してしまいます。
構造的な要因で外耳炎を起こしている場合は、特に高温多湿な夏の時期に外耳炎が悪化しやすいです。
皮膚コンディションの悪化
マラセチアの好物である皮脂が多くなってしまう病気がある場合、マラセチア性外耳炎を発症しやすくなります。
- 脂漏症
- アレルギー性皮膚炎
- 脂質代謝に影響が出る内分泌疾患
外耳炎を繰り返している場合はこれらの基礎疾患が背景にあることを必ず考慮します。
そのため、他の症状や、発症した際の食事などの変化も気をつけて見ておくことが重要です。
免疫力の低下
加齢やストレスなどで犬の免疫力が低下すると、耳のような皮膚の弱い場所には影響が出やすいです。
健康な時は共生できたマラセチア菌に対しての抵抗力がなくなり、外耳炎を起こしてしまうことがあります。
症状
マラセチア性の外耳炎では、以下のような症状が出ます。
- 耳の痒み、赤み
- 独特な臭い
- 茶〜黒色のベタベタした耳垢
外耳炎の犬の飼い主様は、「犬が耳を痒がる」「耳の臭いがきつい」と言って動物病院に相談に来られる方が多いです。
犬の耳の痒みを放っておくと、耳の穴の奥にある鼓膜が損傷し、中耳炎や内耳炎といった病気に発展してしまうので注意が必要です。
外耳炎が慢性化した場合に、繰り返す炎症により耳道の皮膚が分厚くなってくることが多いです。
そうすると、耳の穴がどんどん狭くなっていき、最終的には埋まったような状態になってしまうこともあります。
耳の穴が狭くなった状態になると、通気性が悪いため耳道内の皮膚状態は悪循環に陥ってしまいます。
診断
動物病院に外耳炎の犬がきたら、獣医師はしっかりと犬の様子を確認します。
診察室のような緊張するはずの環境でも耳を掻いたり、耳を触ると怒る姿が見られると、かなり重度の痒みがあると言えますね。
そして、耳道の状態や臭いを確認し、耳垢を採取します。採取した耳垢は顕微鏡で観察し、異常に増えたマラセチアが確認されたら診断となります。
耳鏡やビデオオトスコープなどの器具を耳の奥まで入れて鼓膜の損傷や炎症の範囲をしっかりと確認することも多いです。
治療
マラセチア性外耳炎の治療法は大きく3つに分けられます。全て実施することもあれば、原因や症状によっては組み合わせて治療を行うこともあります。
耳道洗浄
外耳炎専用の洗浄液で耳道内を洗浄することで、耳垢や過剰な皮脂を洗い流し、マラセチアの増殖を抑えることが目的です。
耳垢が大量に付着している場合は、通気性が悪くなって外耳炎が悪化するだけでなく、耳垢自体が異物感で痒みにつながることもあります。
犬が許容してくれる場合はお家でのケアとして行うことも効果的です。
抗真菌薬などの投薬
マラセチアは真菌の一種なので抗真菌薬が有効です。
外耳炎の時は痒みを引かせることも重要なので、抗炎症薬であるステロイドなどと合剤になっている外用薬を使用することが多いです。
耳に直接垂らすタイプの外用薬を使う場合は、重症度やその犬の性格によって毎日短期間使用するものや病院で滴下して長期間有効な薬もあります。
症状がひどい場合は内服薬を使用することもあります。
基礎疾患の治療
基礎疾患があることで外耳炎が発症している場合は、基礎疾患の治療をしなければ再発します。
経過や検査から基礎疾患が原因として疑われる場合は、その治療も実施しなければいけません。
逆に外耳炎を何度も繰り返す場合は、何らかの病気の合図である可能性もありますね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回はマラセチアによる外耳炎について解説いたしました。
犬を飼っているご家庭では比較的身近な外耳炎は、繰り返すことの多い疾患のひとつです。
外耳炎になったことのある犬の場合は、しっかり管理してあげることで再発や悪化を防ぐことができます。
犬の繰り返す外耳炎に悩まれている方は、ぜひ当院へご相談ください。
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