秀一郎ちゃん完治までの道のり〈頬の腫れ → 歯根尖膿瘍〉

診察台の上にいるチワワ

皆さま、こんにちは。

私たち『どうぶつの歯科』では、皆さまの愛犬や愛猫が健康で幸せな生活を送るために、熟練した歯科診察を提供しています。そして、この診察を通じて、皆さまの愛犬や愛猫がご自宅やかかりつけ医と連携しながらケアできることを目指しています。

このプロセスを「完治までの道のり」と称し、この節目を迎えた愛犬や愛猫とご家族の皆様の成功エピソードを共有することにしました。症状の改善は私たちにとっても大きな喜びです。

ここでご紹介するエピソードが、他の飼い主の皆様にも希望と励ましをもたらし、愛犬や愛猫のケアに役立つ情報となることを願っています。これからも、愛する愛犬や愛猫たちと共に歩む皆様を応援してまいります。

治療の始まりとその経過

年齢: 14歳
品種: チワワ
性別: 去勢オス

秀一郎ちゃんが最初に来院されたのは、左顔面の腫れとただれが主訴でした。

この症状は2週間前から始まり、1年前にも同様のことがありましたが、その時は自然に落ち着いたとのことでした。

かかりつけの動物病院では歯槽膿漏と診断され、処置を予約されていましたが、麻酔に対する不安から再度相談に来られました。特に、高齢のため麻酔が心配とのことでした。

治療内容とその期間

診断名：歯根尖膿瘍

歯根尖膿瘍とは？

歯石には多数の細菌が含まれており、炎症を起こしている粘膜から血管内に入り込むことがあります。この細菌は血流に乗って根尖部に到達し、細菌感染を引き起こします。その結果、歯槽骨が溶解し、膿瘍が形成されるのが根尖膿瘍です。

特に、上顎第四前臼歯周辺の目の下は根尖膿瘍の好発部位であり、進行すると頬の腫れが見られます。腫れは軽度である場合もありますが、時には大きく膨らんだり、膿瘍部分の頬の皮膚が破れ、そこから腐敗臭を伴う膿が排出されることもあります。

診察の結果、左上顎の第2前臼歯の歯根尖膿瘍が疑われました。ご家族の高齢に対する麻酔への不安をしっかりと受け止め、高齢でも麻酔処置が可能であること、また処置によって完治が期待できる病気であることをご説明させて頂きました。そして、全身麻酔下でのスケーリングと抜歯を提案し、飼い主様の同意を得て当院で処置を行うことになりました。

2月28日:
初診時の診察内容をもとに治療計画を立て、抗生剤と整腸剤の内服を開始しました。

3月5日:
術前検査を実施し、腎数値の上昇が見られましたが、全身麻酔は問題なく実施できると判断しました。

3月16日:
全身麻酔下でスケーリングと抜歯を行いました。また、眼瞼腫瘤も麻酔中にレーザーでの処置を行いました。術後の痛み止めは腎数値を考慮し、ブプレノルフィンという注射による痛み止めを使う事をご家族と相談しました。

3月29日:
術後再診を行い、頬の腫れは消失し、体調も良好であることを確認しました。

5月1日:
最終診察では、頬の腫れの再発もなく、経過は良好でした。今後はホームケアで歯周病予防を続けていくことになりました。

歯科処置前と歯科処置後の写真

治療費概算

治療費概算: 189,651円　これには初診から麻酔下での手術、薬剤投与、定期的な診察とケアが含まれています。（治療期間: 2月28日から5月1日まで）

ご家族様の心境の変化

治療が始まる前、飼い主様は高齢の秀一郎ちゃんに麻酔をかけることに非常に不安を感じていました。かかりつけの動物病院での説明に納得できず、当院にご相談いただいた時には深い悩みと不安を抱えていらっしゃいました。治療を無事に終えて、秀一郎ちゃんの頬の腫れが完全に消失した後、飼い主様の表情は大きく変わりました。現在は、再発の不安もなく、秀一郎ちゃんが元気に過ごしていることに喜びを感じているご様子でした。

担当医からのメッセージ

オーナー様の高齢に対する麻酔への不安をしっかりと受け止め、高齢でも麻酔処置が可能であること、また処置によって完治が期待できる病気であることをご説明させて頂きました。その結果、手術を決断して頂くことが出来ました。秀一郎ちゃんの治療を通じて、麻酔下での歯科治療に対する不安や悩みを共有し、一緒に乗り越えることができたと感じております。

歯科専門診察を通して、多くの犬猫に対して歯科処置を提供してきましたが、その中には勿論高齢の子たちも含まれます。時に獣医麻酔歯科専門医と連携を取って、何百例処置してきたからこそ、自信をもって良い提案をする事が出来ました。

飼い主様の信頼を得て、無事に治療を終えることができたことは、私たちにとっても大きな喜びです。これからも秀一郎ちゃんが健康に過ごせるよう、全力でサポートしてまいります。