サーカス動物病院の専門眼科診療のアドバイザーである青木先生が、このたび「アメリカ獣医眼科専門医」の資格を取得されました。
この資格は、日本人では4名しか認定されない、特別な専門資格です。そんな大きなチャレンジを乗り越えられたこと、スタッフ一同、本当に嬉しく思っております。
今回は、青木先生ご自身に、これまでの道のりや、診療にかける想い、そしてこれからのことについてお話を聞いてみました。ぜひ、先生の素顔や情熱にもふれていただけたら嬉しいです。
専門医取得、おめでとうございます!いまの率直なお気持ちは?
ありがとうございます。嬉しさはもちろんありますが、専門医というプレッシャーと、これまでのご縁への感謝の方がずっと大きいですね。
まずプレッシャーについて。これは自分自身を律するというものでもありますのでネガティブなものではありません。動物に対しても、飼い主様に対しても、総合診療医の皆様に対しても、常に答えであり続け、最後の砦でなければならないという意識を持ち続けるようにしています。
アメリカでレジデンシー(研修医)プログラムに参加でき、専門医試験まで辿り着くことができたのは、ご縁に恵まれたことが何よりも大きいことでした。自分にとっては第二の父と母と呼べる存在が、日米の両方にいます。誰しも人生において、この人に出会わなければ今の自分はいない、という人との出会いはあるかと思います。どうぶつ眼科専門クリニック(大阪)の辻田院長との出会いなくして今の自分はありません。日米の両方でレジデンシートレーニングを受けて米国での専門医試験に挑戦する道を用意してくださった恩師です。辻田院長からは常に、自分が苦労した道を後輩にはショートカットさせてあげたい、というお気持ちをいただいていました。自分もこれからはそうであり続けなければならないと心に刻んでいます。サーカス動物病院においても眼科教育に携わらせていただいていますが、自分が苦労したり失敗したりしながら会得した知識と技術を、同じような辛い悲しい思いをさせずにスムーズに教え与えることが、指導医としての自分の責務であると感じています。
また、フロリダ大学での恩師 Dr. Plummerはアメリカの母と呼べる存在で、彼女自身にもそれは伝えていて、とても喜んでくれています笑。彼女も非常に利他的で、知識技術は当然のことながら、他人を思いやることに非常に秀でた教員でした。英語力も乏しく、初めての海外生活といういわゆる弱者の立場をしっかり理解してくださり、私生活からレジデントトレーニングまで、フロリダ大学で私を支え続けてくれました。
アメリカ獣医眼科専門医はどのような資格ですか?
アメリカ獣医眼科専門医制度(ACVO専門医プログラム)とは、国際的に認定された全米獣医大学の眼科専門医資格を持つ獣医眼科医の指導の下、通常3-4年間にわたり眼科診療や最先端の眼科手術を含む獣医眼科学のトレーニングを行う専門医育成プログラムです。このプログラムの対象動物は、犬・猫だけでなく、馬、経済動物、エキゾチック動物などすべての動物種が含まれます。また病院内での眼科診療に加え、研究または論文、ならびにアメリカ獣医眼科学会での口頭発表等の国際レベルの学術的活動もそのレジデントプログラムでの従事内容に含まれます。
このプログラムに所属するには、獣医大学卒業後に一般臨床経験を積んだ後、毎年11月に公募されるアメリカ獣医眼科レジデントプログラムに応募し、合格しなければなりません。 ただし、全米で毎年提供されるポジションはわずか5〜10席程度しかなく、アメリカだけでなくヨーロッパやアジアなど世界各国から応募が集まります。そのため、競争率は例年50〜60倍となります。
2025年9月現在、この眼科専門医プログラムを修了し専門医試験を通過した日本人は世界で4人のみです。 日本国内の獣医機関に所属する獣医師では私を含めて2人となります。
獣医師を志したきっかけは?眼科を選んだ理由もお聞かせください
実は獣医師を目指すにあたってそれほど深い理由やきっかけがあったわけではないんです。強いて言えば実家で犬を飼っていたことくらいでしょうか。この子が病気になったら自分が治してあげられるようになりたいと…。それも高校2-3年生の頃でしたので、他の人に比べたらだいぶ遅いと思います。
眼科の専門を目指したのは獣医学部4-5年生の頃でした。私が在籍した麻布大学獣医学部では学生は3年生から研究室に所属をします。その時に選んだのが眼科研究室だったのですが、それにもこれまた深い理由はありませんでした。ちょっと珍しくて面白そうだったから…?くらいです。感動的な話を用意できずすみません…笑
そんな学生だったので、初めの頃は眼科の勉強も全くしていませんでした。むしろアルバイトや遊びを頑張りたい、ごく普通の大学生でした。ところが、獣医学部4年生になった頃から大学病院の実際の診療に立ち会う機会が増えていきました。診察の補助や見学をすることも多かったのですが、まあ何をしているのか全くわからない。だから全く面白くなかったんです。夏休みの日も朝から晩まで大学病院で診察の補助や手術の準備をしていました。長い時間、教員の先生や先輩が何をやっているのかもわからず、ただただ作業としてこなしていました。
これではダメだ、時間がもったいない、と思い始めたのはその頃でした。眼科学の参考書を2冊ほど買って自学習を開始したことをよく覚えています。すると、少しずつ診察の内容がわかってきたり、処方された薬のことがわかり始めて、もしかしたら眼科面白いかも…と気づきました。眼科は、内科、外科、画像診断、腫瘍科、病理診断科など様々な科を眼球というひとつの臓器の中で体現できる診療科です。だからこそ複雑で難しく、奥が深いと感じる科なのでしょうね。熱しやすい性格なので、のめり込むのにはそう時間はかかりませんでした。4年生の夏から秋ごろにはすっかり眼科の面白さにとりつかれて、休みの日には眼科の学会に足を運んだり、面白そうな参考書を買って読んでいました。
5年生になり、進路について考える時間が増えてきました。麻布大学では当時、アメリカのペンシルベニア大学と留学協定を結んでおり、希望すれば2週間ほどペンシルベニア大学を見学することができるプログラムがありました。父が海外で仕事をしていたこともあり、漠然と海外に憧れがあった自分は、両親に頼み込んでそのプログラムに参加しました。
5年生の夏でした。
これが、人生を変えたイベントになりました。
アメリカの大学病院って面白い…いつかこの環境で戦ってみたい…
そう思ったのは教育システムでした。アメリカの大学病院では、教員(専門医)ーレジデント(研修医)ーインターン(研修医)ー学生がチームとなって診療と教育を両立させていました。そこでは過度な上下関係はなく、お互いを教育者として尊重した関係が成り立っており、誰もが貪欲に成長と教育を求める世界が広がっていました。
それは、当時の自分が求める世界そのものだったのでしょう。その経験をへて、アメリカで研修医になりたい、という目標ができました。
多くの専門医の先生方は、この分野で専門医になりたいからアメリカへ渡る、という方が多いかと思います。
自分の場合は、アメリカの大学病院で教育を受けたい。せっかくならそれは眼科だったらいいな、というのが、アメリカでの獣医眼科専門医プログラムを目指したきっかけでした。
アメリカに挑戦した理由が『教育』であったからこそ、今こうして専門医を取得した後に打ち込みたいことが『教育』であったことは、思えばごく自然な流れだったのかもしれませんね。
今後、どんな診療を届けていきたいですか?
神奈川県エリアにおいて、動物にとっての眼科診療の入り口を広げ、ボトムを押し上げる診療と教育を目指しています。今井獣医師と岩川愛玩動物看護師とともに、サーカス動物病院らしい明るくエネルギッシュな眼科チームとなり、眼の困りごとに対して答えを出す診療を実現していきます。
常に明確な答えを出し続ける眼科診療を体現できるチームを目指しますので、ご安心してご通院いただけたら幸いでございます。
青木先生からのメッセージ
目は口ほどにものを言う、とは獣医療でもまさに本当のことで、目の疾患は全身的な疾患とリンクしていることが非常に多いです。些細な困りごとでも遠慮なくご相談いただければ幸いでございます。また、専門医による定期的なアイチェックもアメリカでは一般的に推奨されていますので、特に目の困りごとがない状態でも受診いただいてアイチェックを行うことも可能でございます。遠慮なくお問い合わせくださいませ。
【専門眼科】診療スケジュール・費用
専門眼科診療は月に一度行っております。
- 毎月第一日曜日(月により診療日が変更になる場合がございます)
今後の診療日 10月5日/11月9日/12月14日
当院の専門眼科診療は月に1回のみのご案内となり、3か月先までのご予約が可能です。
※予約枠に限りがあるため、お早めのご予約をおすすめいたします。 - 診察料金
初診:4,400円(税込)
再診:4,400円(税込)
併診:4,400円(税込) ※ 眼科以外を受診されたことのある方
※ 検査・処置が必要な場合は別途費用が発生いたします。
ご予約方法
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専門医として新たな一歩を踏み出した青木先生とともに、サーカス動物病院の眼科診療もさらに進化してまいります。大切なご家族の健康を守るために、これからも尽力してまいりますので、どうぞ安心してご相談ください。
サーカス動物病院