膿皮症という病名を聞いたことはありますか?
膿皮症とは細菌感染が原因の皮膚病のことで、動物病院では比較的よくきく病名のひとつです。
細菌感染による皮膚炎というと、
- ひどい痒みが出そう
- 抗生剤による治療ですぐに治りそう
- 人間や同居の猫にも感染しそう
などのイメージがある方も多いのではないでしょうか。
猫の膿皮症は珍しく、発症した際には単純な皮膚病の治療だけでは解決しないことも多いです。
今回はそんな猫の膿皮症について解説します。
猫の膿皮症について知ることで、愛猫に膿皮症ができたときに正しく対処できるようにしておきましょう。
📍 目次 ▼ 猫の膿皮症とは |
猫の膿皮症とは
膿皮症とは、細菌感染による皮膚炎のことを指します。
膿皮症の原因となる細菌の種類は、ほとんどブドウ球菌と呼ばれる細菌です。
この細菌はいわゆる常在菌ですね。
常在菌というのは、健康な猫の皮膚にも常に存在する細菌のことです。
普段常在菌として存在しているブドウ球菌が猫の皮膚に炎症を起こすのは、どのようなときなのでしょうか。
猫が膿皮症を発症するとき、猫の皮膚のバリア機能が低下している状態であるということを意味しています。
実は、猫が単独で膿皮症を発症することは多くありません。
猫の皮膚の性状が、細菌の増殖に適していないからと言われていますね。
細菌に強い猫の皮膚でも、皮膚の病気や全身性の免疫疾患等により皮膚のバリア機能が著しく低下すると、常在菌が異常に増殖し皮膚炎を起こします。
猫の膿皮症の症状
猫の膿皮症の症状は
- しきりに皮膚を舐める、足で引っ掻く
- 皮膚が赤くなる
- 脱毛する
- 皮膚がえぐれて出血する
- 膿が出る
などが一般的です。
膿皮症では通常炎症の症状としてかゆみが出ます。
かゆみがあるとき、猫はその部位をざらざらしたヤスリのような舌で舐めるようになります。
皮膚の同じ部位をしつこく舐めると皮膚が削れるように傷つくのが想像できますね。
傷がつくと脱毛や出血だけでなく、さらに細菌感染を起こしやすい状況になるという悪循環に陥ります。
猫の膿皮症の原因として考えられる全身疾患
猫の膿皮症は単独で起こることは稀です。
猫で膿皮症を発症したとき、何か皮膚の状態が悪くなるような疾患があることがほとんどです。
ここからは、膿皮症の原因となる疾患というのはどのようなものがあるかご紹介します。
感染性皮膚炎
感染性皮膚炎には、細菌以外にも糸状菌症というカビによる皮膚炎やノミやダニなどの寄生虫による皮膚炎もあります。
猫では、カビや寄生虫による皮膚炎が比較的多いです。
カビや寄生虫による皮膚炎では、かゆみの症状の有無に関わらず、皮膚の状態が悪くなってしまいます。
皮膚の状態が悪化することで常在菌が増殖し、続発的に膿皮症を併発します。
アレルギー性皮膚炎
猫では、アレルギー性皮膚炎も珍しくありません。
アレルギー性皮膚炎は、ある特定の物質に対し過剰な免疫反応を起こし、皮膚に炎症ができる病気です。
猫のアレルギー性皮膚炎には、原因ごとに
- 猫アトピー性皮膚炎
- 食物アレルギー
- 接触性皮膚炎
などに分けられます。
猫のアレルギー性皮膚炎は、原因となる物質やよく症状が出る部位などまだ他の動物に比べはっきりしていないことも多い病気です。
アレルギー性皮膚炎は原因に関わらず炎症を起こしているため、ほとんどの場合で皮膚にかゆみが出ます。
炎症によるかゆみで皮膚を舐めることにより、皮膚の状態が悪化し続発的な膿皮症を発症します。
内分泌疾患
猫でよく見られる内分泌疾患であるクッシング症候群や甲状腺機能亢進症などを発症することでも膿皮症を発症しやすくなります。
クッシング症候群とは、副腎皮質という腎臓のそばに存在する組織の機能が亢進する病気です。
副腎皮質から分泌されるホルモンの中で、皮膚のバリアについて重要な役割を担うホルモンが存在します。
そのホルモンのバランスが崩れることで皮膚が薄くなり膿皮症を起こしやすくなります。
甲状腺機能亢進症は高齢の猫に特に多い疾患で、甲状腺は全身の代謝に関わる組織です。
甲状腺機能更新症では皮膚の代謝が亢進し皮膚の状態は不安定になるだけでなく、猫の活動性が高くなります。
活動性の増加により過剰にグルーミングを招き、皮膚の状態が悪化すると膿皮症を発症しやすくなります。
免疫力が低下している状態
免疫に関する疾患により皮膚の健康状態が悪化することも珍しくありません。
猫では、免疫不全に陥るウイルス感染症や免疫力の低下する糖尿病が比較的身近に存在します。
全身の免疫力が低下するような病気では、皮膚のバリア機能も低下し膿皮症を発症しやすくなります。
加齢
加齢は、皮膚のバリア機能を低下させるだけでなく、グルーミングができなくなることによる皮膚の状態の悪化も招きます。
一般的に高齢の猫では関節炎を発症しやすく身体中に痛みを感じていることが多いです。
全身の関節に痛みを感じているときはグルーミングが減少し、毛玉が増えるなど皮膚の状態が悪化します。
心因性皮膚炎
猫では膿皮症の原因として、心因性の皮膚炎も珍しくありません。
猫はグルーミングにより幸福感を感じるホルモンを出すことができます。
ストレスが原因で過度なグルーミングを行うようになると、皮膚が傷つき膿皮症の原因となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
猫の膿皮症は単純な皮膚の感染症ではなく、全身性の疾患が原因であることもあるということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
愛猫に異常があっても「小さな皮膚炎なら、少し様子を見よう」と考えられるご家族も多いでしょう。
実際猫の皮膚病は、繰り返したり皮膚の深くまで病気が進行してからご相談いただくことの多い病気の一つです。
そのような状態になると治療が難しくなるだけでなく、全身性の疾患が隠れている場合には発見が遅れてしまいます。
小さな皮膚炎にもきっちり対処することで病気の早期発見につながることもあります。
愛猫の皮膚炎に気がついた方はぜひ、早めに当院までご相談ください。
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