深在性膿皮症という病名を聞いたことがありますか?
「愛犬はよく皮膚炎になるけれど、病名まで知らない」
という方は多いのではないでしょうか。
犬の皮膚疾患は、実は動物病院にご相談いただく病気の中で最も多い分野です。
そんな皮膚疾患の中でも、今回は他の皮膚疾患に比べ、少し複雑な深在性膿皮症について解説いたします。
犬の皮膚炎について詳しくなって、治療への理解を深めましょう。
📍 目次 ▼ 深在性膿皮症って何? |
深在性膿皮症って何?
膿皮症とは、細菌感染が原因で発生する皮膚炎の病名です。
膿皮症と一言で言っても、細菌が入り込んで炎症を起こす部位によって分類があります。
その中でも、比較的皮膚の組織の深いところ、真皮や皮下組織の細菌感染による皮膚炎を、特に深在性膿皮症といいます。
膿皮症の原因になる細菌は、犬の健康な皮膚にも存在するいわゆる常在菌です。
常在菌は、皮膚のバリア機能として役立つという面もあり、普段は共生関係にいます。
そんな常在菌が皮膚に炎症を起こしてしまうときは、犬の免疫力に原因があることが多いです。
犬がなんらかの全身性の疾患を抱えていたり、皮膚の状態がわるくなっていると、深在性膿皮症のような皮膚炎が発症してしまいます。
主な症状
深在性膿皮症の主な症状は「腫れ」です。
深在性膿皮症では、皮膚の深いところに炎症が起こるので、最初は広く腫れあがります。
大きさは、大体直径1cm以上にまで腫れることがあります。
腫れた部分が、炎症により熱を持ったり、痛みを伴うことが多いです。痛みがひどいと、元気や食欲がなくなることもあります。
細菌感染が進むと、皮膚の表面まで炎症が進み、赤くじゅくじゅくした潰瘍ができたり、膿が出てきます。
深在性膿皮症には好発部位があり、犬の場合は、
- 顎
- 背中
- ももの内側
- 足先
にできやすいです。
深在性膿皮症かなと思ったら…
それでは、深在性膿皮症が疑わしいような皮膚炎が見つかった場合どうしたら良いでしょうか。
その場合、今すぐ動物病院で相談するということが重要です。
その理由は、3つあります。
原因が他の病気の可能性がある
通常、皮膚にはしっかりとした免疫システムがあり、そう簡単に細菌感染で皮膚炎がおきることはありません。
しかし、免疫力を低下させたり、皮膚の状態を悪化させるような全身疾患がある場合は、その皮膚のバリア機能が侵されて、皮膚炎を発症します。
深在性膿皮症の基礎疾患には以下のようなものがあります。
- アレルギー性皮膚炎
- 寄生虫やカビの感染性皮膚炎
- 皮脂や発汗のトラブル
- 毛の構造異常
などの、皮膚の異常だけでなく、
- 甲状腺機能低下症などのホルモン性疾患
- 消化器疾患
- 栄養不良
- 悪性腫瘍
など、全身性の病気でも深在性膿皮症を発症することがあります。
放置すると重症化する
深在性膿皮症の場合、毛の生えている部分である毛孔よりも深いところで皮膚炎が起こります。
深在性膿皮症が早期に治療されず拡大していくと、炎症が起こっている部分に生えている毛はどうなっていくのでしょうか。
皮膚炎の発症した部分の毛は、炎症が拡大していくと、破壊され細かくちぎれてしまいます。
そして、毛孔からちぎれた毛が飛び出し、皮下組織に侵入することがあります。
ちぎれた毛の破片は、本来皮下組織にあるべきではないものなので、体にとっては異物です。
体に異物が侵入したら、激しい炎症とともに、免疫システムが働きはじめるようになります。
この反応が起きてしまうと、このちぎれた毛の破片を取るのは難しく、治療が難航するので注意が必要です。
表面のケアだけでは完治しないことが多い
通常皮膚炎というと、塗り薬で良くなるイメージがありますよね。
実際、塗り薬や数日の抗菌薬で改善する皮膚炎も多いです。
しかし、深在性膿皮症の場合は治療がもう少し複雑になります。
皮膚の深いところの感染症なので、塗り薬の効果がなかなか届きづらいことや抗菌薬の飲み薬をしばらく続けないといけないことも多いです。
そのため、愛犬にできた皮膚炎が深在性膿皮症の可能性がある場合は、特に早めに病院を受診することをお勧めします。
病院に行くまでにできること
すぐに病院を受診したくても、なかなか都合がつかないということは多いですよね。
病院の受診まで時間がかかる場合、お家でどのようなことに気をつければ良いのでしょうか。
病変部への物理的刺激を避ける
深在性膿皮症は、皮膚を刺激することで悪化してしまうことが多いです。
犬が気にして舐めたり、皮膚炎の部位にずっと首輪が擦れていたりすると、皮膚の再生が進まず、治りが悪くなります。
そのため、
- 自宅にエリザベスカラーがあれば装着する
- 硬い床やベッドを避ける
- 首輪や服など擦れていれば除去する
などできる範囲で、受診まで皮膚炎の部位に気をつけておきましょう。
清潔に保つ
深在性膿皮症では、血液や膿が出ることが多いです。
皮膚がじゅくじゅくしていると、夏などは特に衛生状態が悪くなります。
深在性膿皮症は細菌感染が原因なので、不潔な状態では細菌の繁殖が進み、皮膚炎が悪化します。
また、じゅくじゅくしたところがかさぶたになると、治療に時間がかかるようになります。
部分的に水で洗ったり、清潔な布で拭いてあげることで、厚いかさぶたになるのを防ぐことができます。
症状が起きる前後の変化を確認
深在性膿皮症は、様々な原因で起こります。
原因が全身疾患の可能性もあり、元気食欲の有無や便の状態など、さまざまな変化が他にも出ているかもしれません。
そういった情報があれば、原因の早期発見にも役立つので、ぜひご家族で相談してみましょう。
犬の変化だけでなく、食事を変えていないか、ライフスタイルの変化がなかったかなども有益な情報です。
また、深在性膿皮症は、薬により発症することもあります。別の治療で飲ませた薬が体質的に合わず発症したということもよくあります。
薬を飲んでいる場合は、種類が分かるようにしておきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
深在性膿皮症は、犬の皮膚疾患の中では比較的重症な皮膚炎です。
犬も痛みや痒みを伴うため、一緒に暮らしているご家族にとっては、とてもかわいそうですよね。
皮膚炎は、目に見える範囲の病気と思われがちで、比較的軽視されやすい傾向にあります。
しかし、深在性膿皮症では、目に見える範囲の皮膚炎だけでなく、全身性の疾患が原因の可能性もあります。
そのため、深在性膿皮症が疑わしいような皮膚炎が発症した場合は、皮膚炎の治療のためだけでなく、全身疾患の早期発見のためにも早めに当院へご相談ください。
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