犬の脂漏症から解放されるには?|ベタつきやフケからの解放
「愛犬の皮膚がベタベタしている」
「フケを取っても取っても出続ける」
こんなお悩みを抱えている犬の飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。
この症状は犬の脂漏症の可能性があります。
今回はこの犬の脂漏症について詳しく解説していきます。
ぜひ最後までお読みいただき、脂漏症の犬を飼われている飼い主様は、愛犬のベタつきやフケという悩みから解放されると幸いです。
📍 目次 ▼ 脂漏症の原因 |
脂漏症の原因
脂漏症と聞くと脂っぽくなる病気がイメージしやすいかもしれません。
しかし脂漏症には、皮脂が過剰に分泌されベタベタと脂っぽくなる油性脂漏症と、フケが過剰に生まれる乾性脂漏症があります。
この脂漏症の2つのパターンは皮膚のメカニズムから理解することができます。
皮膚のターンオーバー
「ターンオーバー」という言葉を聞いたことは多いのではないでしょうか?
皮膚のターンオーバーは皮膚の表面である表皮で起こります。
表皮の一番深いところでは、新しく細胞が作られ、それが形を変えながら表面に押し上げられていきます。
押し上げられた結果、最終的に古くなった細胞が表面から剥がれ落ち、これを皮膚のターンオーバーと呼びます。
ターンオーバーの結果、表皮は常に新しい状態を保とうとします。
ターンオーバーの期間に皮膚の細胞はセラミドなどの保湿成分を作ったり、皮膚の表面をおおう適正な量の皮脂を作ったりすることで、皮膚のバリア機能を維持しています。
脂漏症はターンオーバーの異常から起こる?
犬では通常ターンオーバーは約3〜4週間で行われます。
脂漏症は、ターンオーバーの期間が様々な原因で短くなってしまうことで発症します。
ターンオーバーが短くなることでセラミドなどの保湿成分を十分に作ることができなくなり、乾燥を補うために皮脂が過剰に分泌されます。
その結果引き起こされるのが、皮膚にベタつきが増える油性脂漏症です。
ターンオーバーが短くなると表皮が剥がれる頻度が増えます。
その結果引き起こされるのが、皮膚にフケが増える乾性脂漏症です。
ターンオーバー異常が出る原因
ターンオーバーの異常が出る原因には2つあります。
遺伝的な原因
遺伝的にターンオーバーがうまくいかず、脂漏症になりやすい体質の犬種が存在します。
- シーズー
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- ウェストハイランドホワイトテリア
- プードル
- ラブラドール種
などが挙げられます。
後天的な原因
遺伝とは関係なく後天的に脂漏症を発症することがあります。
- 皮膚の炎症性変化
- 内分泌疾患(副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症)
- 外部寄生虫(ニキビダニ)
- 腸内の寄生虫
- 真菌感染
- 栄養障害(糖質、タンパク質、脂肪分、必須脂肪酸、ビタミン類、ミネラル等微量元素のバランス)
- 心臓肝臓の病気
- 自己免疫疾患
- アレルギー
などが挙げられます。
脂漏症の症状
油性脂漏症では皮膚がベタつき、乾性脂漏症ではフケが増えるのが一般的です。
脂漏症の他の症状について解説します。
脂漏症ではマラセチアというカビが増える?
犬の皮膚にはマラセチアという真菌(カビ)が常に存在しています。
マラセチアは湿度と脂分を好むため、皮脂の量が増える脂漏症で異常に増殖します。
増えたマラセチアは、バリア機能が弱った皮膚の表面で炎症を起こし、かゆみを引き起こします。
マラセチアは独特な匂いがするので、マラセチアが増えているかなんとなくわかるようになりますね。
マラセチアは湿度が上がりやすい場所で増えやすいです。
- 耳の中
- 顔のしわの間
- 脇
- 内股
などで増えやすいです。
脂漏症の治療
脂漏症の治療は単純なものではありません。
様々なものを組み合わせて治療をする必要がありますね。
ここからは脂漏症の治療について解説していきます。
原因の治療をする
遺伝以外が原因の場合は、その原因に対して治療を行います。
原因に内分泌疾患があるなら内分泌疾患の治療を、栄養障害があるなら適切な栄養補給を、というように治療をします。
飼育環境を整える
脂漏症は適切な飼育環境でない場合は悪化する傾向にあります。
湿度温度の管理
脂漏症では高温多湿環境下でマラセチアが増殖する傾向にあります。
マラセチアを増殖させないためには
- 室温25〜28℃
- 湿度60〜70%
の環境にするようにしましょう。
梅雨や夏は冷房や除湿機で温度湿度管理をすることが勧められます。
冬場は暖房が効きすぎて皮膚が乾燥してかえって症状が悪化することがあるので注意しましょう。
生活環境の清浄化
脂漏症では、皮膚のバリア機能の低下により、元々持っている犬アトピー性皮膚炎が悪化していることがあります。
環境中のアレルゲンを回避するために定期的に掃除機をかけるなどの対策を行いましょう。
服によりアレルゲンから保護してあげることも有効ですが、脂漏症の場合は服が汚れやすくなるので注意しましょう。
洗浄
脂漏症の治療の主役となるのが、この洗浄です。
脂漏症の管理をするにはマラセチアのエサとなる皮脂、フケを適切に除去することが有効です。
皮脂やフケを効率的に取り除くためには、洗浄力の強い高級アルコール系界面活性剤配合シャンプーが必要な症例が多いです。
しかし、これらのシャンプーは刺激が非常に強いです。
犬アトピー性皮膚炎など、皮膚のバリア機能が著しく低下している病気を併発している場合は、かえって悪化することがあるので注意しましょう。
どのシャンプーを使ったらいいかわからない場合は、低刺激性のアミノ酸系界面活性剤や、保湿成分が配合されているシャンプーから始めることがおすすめです。
当院では、洗浄をシャンプーだけではなく、入浴や部分的なクレンジングを併用することをおすすめしています。
入浴では重曹泉、硫黄泉、マイクロバブル浴が皮脂汚れの除去に有効です。
シャンプー後のドライヤーのかけすぎは皮膚を乾燥させ、かえって皮脂の分泌を刺激し、脂漏を悪化させることがあります。
- タオルドライのみにする
- 冷風のドライヤーを使う
- 温風のドライヤーの場合はできるだけ皮膚から離して使う
など工夫しましょう。
保湿
シャンプーの後はもちろん、日常的な保湿を行うことで過剰な皮脂の分泌を防ぐことができます。
ベタつきが強い場合は、ホットタオルやワイプなどで汚れを軽く拭き取ってから保湿剤をつけましょう。
保湿成分に大きな制限はないですが、油性脂漏症の場合はローションやスプレーなどさっぱりとした仕上がりになるものがおすすめです。
ふけが多いときや脂漏症が慢性化して皮膚がゴワゴワになっているときは、尿素の保湿剤が有用です。
固まった皮膚も10〜20%程度の尿素のクリームを毎日塗布することで、徐々に柔らかくなっていきます。
乾性脂漏症では、油剤を使用することでフケが緩和することもあります。
スクワランなどの動植物油や必須脂肪酸などが有効です。
栄養管理
脂漏症には適切な栄養管理も重要です。
まず肥満体型の犬はダイエットをしましょう。
肥満体型は余計なしわが多くでき、擦れたり、蒸れることで皮脂の過剰分泌を招きます。
皮脂が過剰に分泌されるとマラセチアの増殖を促し、脂漏症を悪化させてしまいますね。
年齢に合っていない食事を与えている場合は適切な栄養バランスの食事に変更しましょう。
また、おやつ(特にジャーキー)を通して糖質や脂質が過剰になっている場合は一度中止してみましょう。
乾性脂漏症では必須脂肪酸を豊富に含んだ食事への変更、ビタミンA・Eや亜鉛の補給が有効です。
薬物療法
薬物療法には
- 炎症や皮脂分泌を抑える作用を持つステロイド剤や免疫調整剤
- マラセチアの増殖を抑える抗真菌薬
などが挙げられます。
ここまで挙げられた治療が奏功しないとき、症状が重度なときに使われます。
まとめ
いかがでしょうか?
脂漏症は遺伝による体質から発症することが非常に多いです。
体質の場合は治ることはなく、生涯通して付き合っていく必要があります。
愛犬にとって最適な付き合い方を見つけていきましょう。
当院は皮膚科に力を入れています。
脂漏症の管理でお悩みの方はいつでもご相談ください。
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