犬のレプトスピラ症とは?|初期症状の見分け方と予防法を獣医師が解説

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投稿日:2025.02.08 更新日:2026.07.11

近年、犬の感染症の中でも特に注意が必要とされているのがレプトスピラ症です。
レプトスピラ症は、気づいたときには肝臓や腎臓に重い障害を引き起こし、重症化しているケースも少なくありません。
また、レプトスピラ症は人にもうつる「人獣共通感染症」としても注意が必要です。
レプトスピラ症は2024年に国内の犬の感染報告が急増し、2026年も首都圏近郊で発生が続いている状況です。

この記事では、レプトスピラ症の初期症状の見分け方から予防法まで詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、レプトスピラ症から愛犬を守るためにお役立てください。

 📍 目次
▼ 犬のレプトスピラ症とは?
▼ レプトスピラ症の注意すべき症状
▼ レプトスピラ症の感染経路とは?散歩コースに潜む意外なリスク
▼ レプトスピラ症の診断と治療
▼ レプトスピラ症を防ぐワクチンの選び方と日常の予防策
▼ まとめ

犬のレプトスピラ症とは?

レプトスピラ症とは、レプトスピラ属の細菌が引き起こす感染症で、犬をはじめ多くの哺乳類に感染します。
感染した動物の腎臓に細菌が棲みつき、尿とともに排出されることで土壌や水が汚染される仕組みです。
特にレプトスピラはネズミの尿から排出されることが多いため、ネズミが出没しやすい公園や草むらには、なるべく近づかないようにしましょう。
レプトスピラ症は皮膚の傷口や粘膜から菌が侵入して感染が成立します。
乾燥には弱い一方、湿った土壌では菌が長期間生存するため、水たまりや川のそばでは注意が必要です。

レプトスピラ症の発生状況

かつてレプトスピラ症は農村部や山岳地帯に多い病気というイメージがありました。
しかし近年、その状況は大きく変化しています。

農林水産省の届出データによると、2023年までは年間20〜30例程度で推移していた犬の感染報告が、2024年には55例へと急増しました。
神奈川県だけで6例が報告され、全国トップクラスの発生数を記録しています。
2025年1月には藤沢市、同年4月には横浜市青葉区でも感染犬が確認され、2026年には川崎市でも発生報告がありました。

レプトスピラ症の感染は、気候変動による水害の増加が今後さらにリスクを押し上げると指摘されています。
ネズミは住宅地や公園にも生息しており、犬種・年齢を問わず感染する可能性があります。

レプトスピラの血清型とワクチンの関係

レプトスピラには200種類以上の血清型(けっせいがた)が存在します。
血清型とは、同じレプトスピラ菌の中でも性質が異なるタイプのことです。
人間のインフルエンザにA型・B型があるように、レプトスピラにもさまざまな「型」があると考えるとイメージしやすいのではないでしょうか。

レプトスピラ症は血清型によって引き起こす症状や流行地域が異なります。
日本の犬で特に問題になるのは、黄疸や出血を引き起こすイクテロヘモラジー型と、腎臓に影響を及ぼすカニコーラ型の2つです。
近年はグリッポチフォーサ型やポモナ型の感染例も報告されており、ワクチン選択の重要性がますます高まっています。

レプトスピラ症は
「混合ワクチンを受けているから安心」
と一律には判断できません。
接種したワクチンにレプトスピラが含まれているか、またどの型に対応しているかを確認することが大切です。

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レプトスピラ症の注意すべき症状

レプトスピラ症が厄介な理由は、初期症状がほかの体調不良と似ているため発見が遅れやすい点にあります。
感染から発症までの潜伏期間は数日〜2週間ほどとされ、その間は体内で静かに増殖を続けます。
レプトスピラ症は初期のサインを見逃さないことが、早期治療のために重要です。

見逃しやすいレプトスピラ症の初期症状

レプトスピラ症の初期段階で現れる変化は、他の病気との区別が難しいことが多いです。
以下のサインが複数重なっている場合は、早めの受診を検討しましょう。

  • 急な発熱(39℃以上に達することもある)
  • 食欲の低下
  • 嘔吐や下痢
  • 筋肉を痛がる様子(体に触れると嫌がる)
  • 水を飲む量や尿量の変化

これらはレプトスピラ症の初期症状の可能性があります。
レプトスピラ症を疑ったら、水辺や野生動物との接触がなかったかを振り返ってみましょう。

すぐに受診すべき危険な症状

レプトスピラ症は初期症状を見過ごしてしまうと、肝臓・腎臓へのダメージが進行し、より深刻なサインが現れてきます。
以下の変化が見られた場合はレプトスピラ症が進行している可能性があるので注意しましょう。

  • 目や歯茎が黄色く変色する黄疸(おうだん)が見られる
  • 尿が極端に少ない、またはまったく出ない
  • 血尿・鼻血などの出血傾向がある
  • 何度も吐いて水も飲めない
  • 呼吸が速く苦しそうにしている
  • けいれんや意識の低下がある

これらはいずれも緊急性の高い変化です。
すみやかに動物病院に連絡し、獣医師の指示を仰ぎましょう。

レプトスピラ症の感染経路とは?散歩コースに潜む意外なリスク

落ち葉の中のゴールデンレトリーバー

犬の飼い主様の中には
「うちの子はドッグランにしか行かないから関係ない」
「マンション暮らしだから心配ない」
と思っている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、レプトスピラ症の感染リスクは思いがけない場所に潜んでいます。
ここではレプトスピラ症の感染経路について詳しくみていきましょう。

おもな感染ルートと注意すべきスポット

レプトスピラは、感染したネズミなど野生動物の尿に含まれ、土壌や水たまりなどを汚染します。
犬がその環境に触れ、皮膚の小さな傷や粘膜(口・鼻など)から菌が侵入して感染が成立します。
レプトスピラ症は目に見えないほどの小さな傷やふやけた皮膚からでも感染が起こり得るため、
「傷がないから安心」
とは言いきれません。
特に感染リスクが高まるのは、

  • 雨上がりや台風後の水たまり
  • 増水した川沿い
  • ネズミが出没しやすい公園、草むら、河川敷
  • 他の犬が集まるドッグランや多頭飼育施設

などです。
散歩をする上で、これらの環境を完全に避けることは難しいので、天候や環境に応じてコースを選ぶことが大切です。

レプトスピラ症は人にもうつる?家族全員で意識したい感染リスク

レプトスピラ症は、犬から人にも感染しうる人獣共通感染症(ズーノーシス)です。
人は感染動物の尿や、尿で汚染された水が皮膚の傷や粘膜に触れることで感染する可能性があります。
犬から人への直接感染は多くはないものの、感染が疑われる愛犬の尿や吐物は慎重に取り扱いましょう。
具体的には素手で触らず使い捨て手袋を着用する、処理後は石けんで手を洗うなどの対策が有効です。
また、小さなお子様や免疫力が低下しているご家族は感染リスクが高まるので注意しましょう。

人が感染した場合、発熱・筋肉痛などインフルエンザに似た症状が現れ、重症化すると肝炎・腎炎に至ることもあります。
ご家族に体調変化があり感染した愛犬や汚染水との接触が考えられる場合は、医療機関へ事前に伝えたうえで受診してください。

レプトスピラ症の診断と治療

レプトスピラ症は、治療開始のタイミングが回復を大きく左右する感染症です。
「もう少し様子を見よう」
という判断がその後の経過に影響するため、気になる症状が出た時点で受診をおすすめします。

動物病院で行う検査

レプトスピラ症の確定診断は、複数の検査を組み合わせて行うことが大切です。
血液検査で腎臓・肝臓の数値や炎症を確認し、尿検査で腎臓への影響を調べます。
加えてPCR検査(菌のDNAを直接検出する検査)や抗体検査(体が菌に対抗して作る免疫物質の量を測る検査)などを行うこともあります。
しかし、PCR検査や抗体検査は病気の時期によっては感染していても陰性となることがあるので注意が必要です。

また、レプトスピラ症が疑われる場合には

  • 散歩場所
  • 水との接触歴
  • ワクチン接種歴

を整理しておくと診断の手がかりになります。

治療の流れと予後

レプトスピラ症の治療の柱は、レプトスピラに有効な抗菌薬の投与と、ダメージを受けた臓器の回復を助けるケアの2つです。
症状の重さに応じて入院管理が必要になることもあり、点滴で脱水を補正したり、肝臓・腎臓の働きを支えたりする治療を行います。
急性腎不全が重篤な場合は専門施設での透析療法を検討するケースもあります。

レプトスピラ症は軽症〜中等症の段階で治療を開始できれば、回復が見込めるケースが多いです。
一方、腎不全や肝不全まで進行してしまうと命に関わることもあります。
また、治療後も腎臓・肝臓への影響が続くことがあるため、退院後の定期的な血液検査や尿検査を欠かさず受けましょう。

レプトスピラ症を防ぐワクチンの選び方と日常の予防策

泳いでいるラブラドールレトリーバー

レプトスピラ症の予防には、ワクチン接種と日常の環境管理を組み合わせることが欠かせません。
どちらか一方ではリスクを十分に下げられないため、両方を実践しましょう。

ワクチンの種類と選び方

現在、サーカス動物病院グループでご用意しているレプトスピラ対応ワクチンは、8種混合と10種混合の2種類です。
8種混合ワクチンはカニコーラ型・イクテロヘモラジー型の2つの血清型に対応しています。
10種混合ワクチンはさらにグリッポチフォーサ型・ポモナ型を加えた計4つの血清型をカバーしています。
いずれも年1回の定期接種が推奨されており、初めて接種する場合は一定の間隔をあけて複数回の接種が必要です。

2024年版のWSAVA(世界小動物獣医師会)ガイドラインでも、レプトスピラ症が常在する地域ではすべての犬への接種が推奨されています。
どちらが愛犬に合っているかは生活環境や健康状態によって異なるため、受診時に獣医師へご相談ください。

日常生活でできる予防チェックリスト

ワクチン接種と並行して、毎日の習慣の中に取り入れたい予防策をまとめました。
すべてを一度に実践する必要はないので、できることから少しずつ始めてみてください。

  • 散歩後は足やお腹周りをタオルで拭く
  • 雨上がりの水たまり・川沿いにはなるべく近づけない
  • 散歩中は飲み水を持参して水たまりの水を飲ませない
  • 野生動物が出没するエリアを避ける
  • 多頭飼育では他の犬と食器やトイレを共有しない
  • アウトドア後は愛犬の体を観察し変化があれば早めに受診する
  • 愛犬のお世話の後は飼い主様も石けんで手を洗う

これらを日常に組み込むことがレプトスピラ症の感染リスクの低減につながります。

まとめ

レプトスピラ症は、2024年に国内での犬の感染が急増し、2026年も首都圏近郊で報告が続く、今まさに警戒が必要な感染症です。
初期症状が見えにくく重症化しやすいため、
「いつもと違う」
と感じた時点で迷わず受診することが大切になります。
年1回のワクチン接種と日常の環境管理を組み合わせた予防が、レプトスピラ症から愛犬とご家族を守る最善策です。

サーカス動物病院グループでは、些細な変化にも一緒に向き合い、飼い主様が安心して相談できる環境を大切にしています。
レプトスピラ症に関してご不安を抱える飼い主様はお気軽にお声がけください。

レプトスピラ症に関するよくある質問(Q&A)

Q. 室内で暮らす犬にもレプトスピラ症のワクチンは必要ですか?

 A.室内中心の生活であっても、散歩に出る犬には感染の可能性があります。
ネズミは住宅地や公園にも生息しており、雨水や土を介して菌に接触する可能性は否定できません。
地域の発生状況や散歩コースを踏まえ、獣医師と相談のうえ接種を検討しましょう。

Q. 混合ワクチンを受けていればレプトスピラ症は予防できていますか?

A.混合ワクチンのすべてにレプトスピラが含まれているわけではありません。
含まれる血清型も製品ごとに異なるため、ワクチン証明書で確認し、不明な場合は動物病院へお問い合わせください。

Q. ワクチンを接種していてもレプトスピラ症に感染しますか?

A.感染する可能性はあります。
ワクチンが対応していない血清型が存在し、免疫のつき方にも個体差があるためです。
ただし、接種により発症や重症化のリスクを下げる効果が期待できるため、環境対策との併用が重要です。

Q. 散歩中に犬が水たまりの水を飲んでしまいました。どうすればよいですか?

A.水を飲んだからといって必ずレプトスピラ症に感染するわけではありません。
口の中を無理に消毒したり自己判断で薬を与えたりせず、場所と日時を記録しておいてください。
その後、発熱・食欲低下などの変化が見られた場合は早めに受診しましょう。

Q. レプトスピラ症の感染が疑われる場合、直接動物病院へ行ってよいですか?

A.まず電話でご連絡ください。
レプトスピラ症は他の犬や人への配慮が必要な感染症であり、来院時間や待機場所を調整する場合があります。
「水辺へ行った」
「近隣で発生情報を見た」
など理由も一緒にお伝えいただくとスムーズです。

レプトスピラ症の実際の発生状況は以下のリンクでチェックしてみてください。
農林水産省 届出伝染病発生状況

犬や猫の年齢や病気の種類を問わず、全身の健康を幅広くケアするサーカス動物病院の総合診療科については以下のページをご覧ください。
サーカス動物病院 総合診療科

また、混合ワクチンに関しては次のページで詳しく解説しています。
狂犬病・混合ワクチン

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