犬の皮膚糸状菌症は人にもうつる?|症状や治療について獣医師が解説

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投稿日:2024.09.03 更新日:2026.09.09
ヨークシャーテリアの顔

「愛犬の毛が抜けた」
「最近フケやかさぶたが増えてきた」
「愛犬を抱っこしていた家族の腕にも赤い発疹が出てきた」
このようなサインは皮膚糸状菌症の可能性があります。
皮膚糸状菌症は真菌(カビ)が皮膚に感染して起こる病気です。
放置してしまうと、人や同居動物に広がるおそれがあるため、早めの発見と治療が欠かせません。

今回は犬の皮膚糸状菌症について詳しく解説し、どのように管理すれば正しく治療できるかを解説していきます。
ぜひ最後までお読みいただき、皮膚糸状菌症の対策にお役立てください。

 📍 目次
 ▼ 犬の皮膚糸状菌症とは?
 ▼ 皮膚糸状菌症の症状
 ▼ 皮膚糸状菌症の診断 
 ▼ 皮膚糸状菌症の治療 
 ▼ 飼い主や同居動物に皮膚糸状菌を感染させないために 
 ▼ まとめ

犬の皮膚糸状菌症とは?

皮膚糸状菌症とは、真菌による感染症で、原因となる真菌はおもにMicrosprum sppとTrichophyton sppの2種類です。
皮膚糸状菌症は罹患した動物や汚染された環境に触れることで感染することが多いです。
そのため、

  • 動物病院
  • トリミングサロン
  • ペットホテル
  • 屋外

などがおもな感染経路として挙げられます。

土に皮膚糸状菌が存在することもあるため、公園やドッグランの土壌から感染してしまうこともあります。
そのほか、ハムスターなどのげっ歯類やうさぎは、症状がなくても皮膚糸状菌を持っている可能性があり、皮膚糸状菌の感染源になることがあるため、注意しましょう。

皮膚糸状菌症は

  • 免疫が未熟な子犬や、体力が落ちやすい高齢犬
  • アレルギーなどで皮膚のバリア機能が低下している犬
  • 持病がある犬や、免疫を抑える薬を使用中の犬

に感染しやすいです。
また、ヨークシャー・テリアやペキニーズは感染すると、重症化しやすいです。
皮膚糸状菌症は感染してから症状が出るまで数週間かかるとされています。
多頭飼育のご家庭では1頭の感染が他の動物へ次々と広がるリスクがあるため、早期発見が大切です。

犬の皮膚糸状菌症で見られるおもな症状

皮膚糸状菌症にかかった犬には、フケや脱毛といった変化が現れます。
皮膚糸状菌の感染は初期の感染部位から広がっていく性質があるため、健康な皮膚との境目がくっきりした脱毛が特徴的なサインです。
症状は顔まわりや足先など、地面や他の動物に触れやすい部位から始まることが多く、体の他の場所へも広がっていく場合もあります。
皮膚糸状菌症の早期発見のために、日頃のスキンシップの中で飼い主様に注目していただきたいサインは以下のとおりです。

  • 毛が抜けている
  • フケが出ている
  • 皮膚の赤みやかさぶたがみられる
  • 毛が抜けている部分と正常な部分の境目がはっきりしている
  • 顔、耳、足先などの部位に症状が限局している
  • 毛先がもろく折れやすくなっている

ただし、これらの症状は皮膚糸状菌症だけに見られるものではありません。
アレルギー性皮膚炎、ニキビダニ症など似た症状を示す病気は数多くあり、かゆみの程度もさまざまです。
皮膚糸状菌症にだけ現れる症状はないため、見た目のみで原因を特定することは難しいことが多いです。

また、皮膚糸状菌の感染以外にブドウ球菌などの細菌の二次感染が重なり、赤みやかゆみがいっそう強くなることもあります。
「少し毛が薄くなっただけかな」
と様子を見ているうちに広がってしまうこともあるため、気になる変化があれば早めに動物病院へご相談ください。

人や同居動物にうつる皮膚糸状菌症のリスク

皮膚糸状菌症は「人獣共通感染症」と呼ばれ、愛犬からご家族へ、また同居の犬や猫へうつることがある感染症です。
人に感染した場合は、愛犬をよく抱っこする腕などに赤い発疹やぶつぶつが現れ、かゆみを伴うことがあります。
ご家族の中でも、以下に当てはまる方は感染しやすいため注意が必要です。

  • 小さなお子様
  • ご高齢の方
  • 妊娠中の方
  • 免疫を抑える薬を服用している方
  • 持病によって免疫力が低下しやすい方

もしご家族の皮膚に赤い輪のような湿疹やかゆみが現れた場合は、人の皮膚科を受診してください。

皮膚糸状菌症の診断

皮膚糸状菌症は、見た目だけでは正確に診断することが難しい病気です。
皮膚糸状菌症かどうかは、複数の検査を組み合わせ、総合的に判断されます。
動物病院で皮膚糸状菌症が疑われた際に実施する検査には以下のものがあります。

ウッド灯検査

ウッド灯検査は特殊な紫外線ライト(ウッド灯)を犬の毛に当て、感染した毛が黄緑色に光るかどうかを確認する検査です。
短時間で愛犬の負担も少ない利点がある一方、この検査で光るのは一部の皮膚糸状菌に限られるため、ウッド灯検査だけで感染の有無を確定することはできません。

毛検査

犬の毛やフケを採取し、顕微鏡で皮膚糸状菌がついていないかを直接観察する検査です。
感染した毛を見つけることができれば、確定診断となります。
ただし、検出率は採材する場所などによって左右されるため、他の検査と組み合わせて判断することが大切です。

真菌培養検査

採取した毛やフケを専用の培地に入れ、皮膚糸状菌が生えてくるかどうかを確認する検査で、結果が出るまでに1週間ほどかかります。
検査の目的は感染した皮膚糸状菌の種類を調べることですが、治療終了の目安のひとつとして使われることがあります。

PCR検査

皮膚糸状菌の遺伝子を検出する検査方法で、数日で結果がわかる場合もあり、スピードの面で優れています。
精度の高い検査のため、その他の検査でうまく検出できない場合に有効です。

皮膚糸状菌症の治療

シャンプーされているチワワ

皮膚糸状菌症の治療方針は、

  • 症状の広がり
  • 持病の有無
  • 同居動物
  • ご家族の状況

によって異なります。
治療の基本は皮膚糸状菌を体の中から減らす薬物療法と環境中から取り除く対策を同時に進めることです。
具体的な皮膚糸状菌症の治療は以下の通りです。

抗真菌薬の内服

抗真菌薬は皮膚糸状菌症のもっとも一般的な治療です。
まれに嘔吐や食欲低下、肝障害などの副作用が出る可能性もあるため、治療中は定期的に受診し、状況に応じて血液検査等を行いながら治療を進める必要があります。
飼い主様の判断だけで薬を始めたり途中でやめたりすることは避けてください。

外用薬(塗り薬)

病変が限られた範囲にとどまっている場合や、飲み薬の補助として、抗真菌成分を含む外用薬を患部に直接塗ることがあります。
外用薬にはクリームやローションタイプのものがあるので、獣医師と相談し、愛犬に適したものを使用しましょう。

シャンプー

抗真菌成分を含むシャンプーが皮膚糸状菌症に対して有効とされています。
シャンプーは被毛や皮膚についた皮膚糸状菌の量を減らす目的で使用します。
ここで大切なのは、シャンプー時に皮膚を強くこすらないことです。
強い摩擦は皮膚を傷つけ、炎症を悪化させたり感染した毛を飛び散らせる原因になりかねません。
洗い方や頻度は、診察時に獣医師へお尋ねください。

毛刈り

長毛の犬や感染が広い範囲に及んでいる犬では、治療の効果を高め、ご家庭での清掃をしやすくするために毛を短くカットすることがあります。
ただし、バリカンで愛犬の皮膚を傷つけてしまうと、傷口から菌がさらに深く入り込んで感染を悪化させるおそれがあるため、注意が必要です。

皮膚糸状菌症の治療はいつ終わる?終了判断のポイント

愛犬の毛が生えそろい、見た目には治ったように見えると、
「もう薬をやめても大丈夫かな」
と感じる飼い主様は多くいらっしゃいます。
しかし、皮膚糸状菌症は見た目の改善と完治にタイムラグがあるのが特徴です。
皮膚の赤みや脱毛がおさまっていても、毛の根元や皮膚の内部にまだ皮膚糸状菌が潜んでいるケースは珍しくありません。
飼い主様の自己判断で治療を中断してしまうと、残っていた皮膚糸状菌が再び増殖して症状がぶり返したり、同居の動物やご家族への感染が広がったりするおそれがあります。

治療終了の判断は、犬の皮膚の状態に加えて検査の結果をもとに獣医師によって総合的に決定されます。
治療期間は犬の状態によって異なりますが、数週間〜数か月に及ぶことも珍しくありません。
途中で症状が軽くなると薬を減らしたくなりますが、処方された薬は獣医師の指示どおりに最後まで飲み切ることがとても大切です。
近年は一部の皮膚糸状菌で従来の薬が効きにくい「耐性菌」の報告も出てきており、中途半端な投薬が耐性を助長するリスクも指摘されています。
見た目だけではなく、「検査で真菌がいなくなったことを確認できた=完治」と考えていただくと、治療のゴールがよりはっきりします。

皮膚糸状菌症の感染拡大を防ぐ家庭での対策

皮膚糸状菌症では、愛犬の治療と並行して、ご家庭内での感染対策も重要です。
皮膚糸状菌は犬の抜け毛やフケと一緒にお部屋に落ち、条件によっては1年近くも感染力を保つことがあります。
第一には皮膚糸状菌がついた毛やフケを物理的に取り除くことが対策の基本です。

治療中は、愛犬が自由に移動できる範囲をできるだけ限定し、抜け毛が家中に広がるのを防ぎましょう。
ただし、子犬を何週間も狭い場所に閉じ込めてしまうと、社会化の遅れやストレスの原因になります。
愛犬の生活の質とのバランスを考え、無理のない範囲で工夫してみてください。

家庭内の清掃も効果的な対策です。
飼い主様に重点的に清掃していただきたい場所・物品は以下のとおりです。

  • 床、寝床など犬が直接触れる場所
  • ブラシ、ハーネスなどのお世話用品
  • エアコンや空気清浄機のフィルターまわり
  • カーペットやソファなどの家具

清掃をする際は掃除機や水拭きで毛やフケをこまめに除去し、洗えるタオルやベッドカバーはなるべく高温のお湯で洗濯しましょう。
毛が繊維の奥に入り込んで取りきれないカーペットやクッションは、処分を検討することも必要です。

消毒を行う際の注意点

消毒は、毛やフケを取り除いた後に行うことで効果が高まります。
次亜塩素酸水や加速化過酸化水素水が有効とされていますが、家具や床材を傷めることがあるため製品の表示を確認してください。
複数の洗剤・消毒剤を混ぜて使うことは大変危険ですので、絶対に避けましょう。
消毒中は十分な換気も忘れずに行ってください。

同居動物がいるご家庭での注意点

同居の犬や猫がいるご家庭では、たとえ同居動物に目立った症状がなくても、動物病院で一度診察を受けることをおすすめします。
特に猫は皮膚糸状菌を持っていても症状がほとんど出ないケースがあるため、注意しましょう。
食器や寝床は感染している犬と他の動物とで分け、治療が終わるまではドッグランなど他の動物と接触する場への外出を控えてください。
飼い主様ご自身も、愛犬に触れた後は毎回手洗いを行い、皮膚に異変を感じた場合は人の皮膚科を受診しましょう。

まとめ

犬の皮膚糸状菌症は、脱毛やフケといった症状で気づくことが多いカビによる感染症です。人や同居の犬・猫にもうつる可能性があるため、愛犬だけでなくご家族全体で対策を行いましょう。
症状の見た目だけで判断せず、動物病院で正確な検査・診断を受け、適切な治療を最後まで続けることが、完治への一番の近道です。

愛犬の皮膚に
「いつもと違うな」
と感じる変化があれば、お早めに当院へご相談ください。

よくある質問(Q&A)

Q.犬の皮膚糸状菌症は自然に治りますか?

A.免疫力が十分にある健康な成犬であれば、自然に改善するケースもあります。
しかし、その間に人や同居動物にうつるリスクがあるため注意しましょう。
異変を感じたら、動物病院で感染の有無を確認し、必要な対策を早めに始めることが大切です。

Q.皮膚糸状菌症の犬を抱っこしても大丈夫ですか?

A.治療中は、愛犬の病変部分や抜け毛に触れる機会をなるべく減らしましょう。
お世話の後は必ず石けんで手を洗ってください。また、触れた洋服は一般的な家庭用洗剤で選択をすれば問題ありません。
お子様やご高齢の方などは密な接触を控えた方が安心です。

Q.シャンプーだけで皮膚糸状菌症は治りますか?

A.感染が皮膚の一部にとどまっている軽症の場合は、外用薬やシャンプー中心で管理できることもあります。
ただし、複数の部位に症状が広がっている場合や、毛の根元まで菌が入り込んでいる場合は飲み薬の併用が欠かせません。
どの治療法が愛犬に合っているかは、獣医師が診察のうえで判断いたします。

Q.家の消毒はどこまですればよいですか?

A.消毒より大切なのは、愛犬の毛やフケを物理的に取り除くことです。
愛犬がよく過ごす場所を重点的に掃除し、洗える布製品は洗濯してください。
毛やフケを除去した後で消毒を行うと、より高い効果が期待できます。

Q.症状が消えたら治療をやめてもよいですか?

A.飼い主様の判断だけで治療を中止することは避けてください。
見た目がきれいになっても、愛犬の毛の中や環境に皮膚糸状菌が残っている可能性があります。
治療の終了は真菌培養検査などの結果をもとに獣医師が判断するので、途中で薬をやめず最後まで続けましょう。

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