猫のFIPによるぶどう膜炎とは?|目の濁りから疑う症状と治療を解説

#コラム #猫の病気 #病気や予防の情報 #眼科
投稿日:2025.06.28 更新日:2026.09.25
道にいるキジトラの子猫

「うちの子の目が、なんだか白く濁っている気がする」
「片目だけ赤くなっている」
愛猫のこうした変化に気づいたとき、多くの飼い主様が思い浮かべるのは白内障や結膜炎ではないでしょうか。
しかし、こうした症状の裏にFIP(猫伝染性腹膜炎)という命に関わる病気が隠れていることがあります。

今回は、 FIPによるぶどう膜炎の症状や治療法について詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、猫の目とFIPの関係について知見を深めてください。

 📍 目次
 ▼ 猫のFIPとぶどう膜炎の関係
 ▼ FIPによるぶどう膜炎の症状
 ▼ FIPによるぶどう膜炎の診断方法
 ▼ FIPによるぶどう膜炎の治療
 ▼ FIPによるぶどう膜炎は早期発見がカギ
 ▼ まとめ

猫のFIPとぶどう膜炎の関係

FIP(猫伝染性腹膜炎)は、多くの猫が持っている猫コロナウイルス(FCoV)が体の中で変異することで、発症する全身性の病気です。
猫コロナウイルスを持っているすべての猫が発症するわけではありませんが、若い猫や多頭飼育の環境にいる猫などはリスクが高いとされています。

FIPには大きく分けて3つのタイプがあり、それぞれ症状の出方が異なります。

  • ウェットタイプ:お腹や胸に水がたまり、お腹の張りや息苦しさが目立つ
  • ドライタイプ:リンパ節や全身の臓器に炎症が起こる
  • 混合タイプ:上の2つの特徴を併せ持つ

この中で目の症状が出やすいのは、ドライタイプと混合タイプです。

FIPでは目の中にあるぶどう膜という部分に炎症を起こすぶどう膜炎がよく見られます。
ぶどう膜とは

  • 虹彩
  • 毛様体
  • 脈絡膜

という3つの組織の総称で、血管がとても豊富な場所です。
FIPでは、猫コロナウイルスに感染した単球やマクロファージと呼ばれる免疫細胞が血流に乗って全身に広がり、血管の周囲を中心に強い炎症を引き起こします。
この炎症は免疫細胞が肉芽腫(にくがしゅ)という塊を作り周囲の組織を傷つけていく肉芽腫性炎症というものです。
ぶどう膜は血管が密集した組織であるため、FIPによる炎症反応が起こりやすいです。
猫の目が白く濁るという症状は目の中だけで起きているトラブルではなく、FIPによって全身に炎症が広がっているサインかもしれません。

また、FIPでは虹彩や毛様体といった目の手前側(前部ぶどう膜)だけでなく、目の奥にある網膜や脈絡膜(みゃくらくまく)にまで炎症が及ぶケースもあります。
目の濁りが見られたら、目の表面だけでなく奥の状態も含めて確認することが大切です。

なお、ぶどう膜炎を引き起こす原因はFIPだけではなく、猫では以下のような病気や状態でも起こることがあります。

  • 猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)
  • 猫白血病ウイルス感染症(FeLV)
  • トキソプラズマ症
  • 外傷や角膜の深い傷
  • 眼内腫瘍

猫のぶどう膜炎を見つけたら、原因をひとつずつ確認していくことが大切です。

FIPによるぶどう膜炎の症状

上を見上げるアメリカンショートヘアー

FIPでは、ぶどう膜炎による目の変化と体調の変化が同時期に現れやすいという特徴があります。
これは、FIPによる血管炎が目だけでなく全身で同時に起きているためです。
ここでは、ご家庭で気づきやすいサインを整理してお伝えします。

目に現れるサイン

FIPではぶどう膜炎によってさまざまな目の症状が現れます。
普段と比べて以下のような変化がないか、チェックしてみてください。

  • 目が白く濁る
  • 白目やまぶたの内側が赤い
  • まぶしそうに目を細める
  • 涙や目やにが増える
  • 左右の瞳孔(黒目)の大きさが違う
  • 虹彩(目の色がついた部分)の色合いが変わる
  • 物にぶつかる

ぶどう膜炎の初期は、少し充血している程度に見えることも多く、見過ごしてしまうこともあるため注意が必要です。
さらに炎症が目の奥にまで広がると、網膜や脈絡膜にも炎症が起こり、視力の大幅な低下や失明につながることもあります。
様子を見ているうちに炎症が進行してしまう場合があるため、気になる変化を見つけたら早めに受診しましょう。

全身に現れるサイン

FIPでは目の変化と同時に、以下のような体調の変化が現れることが多いです。

  • 食べる量が減る
  • 体重が落ちる
  • 寝てばかりで遊ばなくなる
  • 何日も熱っぽい状態が続いている
  • お腹が膨らんでくる
  • 呼吸が速くなる
  • ふらつく
  • けいれんを起こす
  • 歩き方がおかしくなる
  • 耳の内側や歯ぐきが黄色っぽくなる(黄疸)

たとえば片目が白くなったと思ったら、ごはんを食べなくなり、触ると体が熱いという経過は、FIPの典型的なパターンのひとつです。
目の異常に加えて元気や食欲の低下がある場合は、早めに動物病院を受診してください。

FIPによるぶどう膜炎の診断方法

FIPは、ひとつの検査だけで確定できることが少なく、複数の検査から総合的に診断が進められます。
ここではFIPが疑われる際の検査をみていきましょう。

眼科検査

スリットランプという専用の機器で、目の表面から内部までを細い光で観察します。
スリットランプでは、ぶどう膜炎が起きているか、炎症の範囲はどの程度かを確認することが可能です。
あわせて、眼圧の測定や角膜の傷を調べる染色検査が行われることもあります。

血液検査

血液検査では、FIPでしばしば認められる変化がないかを確認します。
特に注目するのは、アルブミンとグロブリンというタンパク質のバランス(A/G比)です。FIPではグロブリンが異常に高くなる傾向があり、この数値の偏りが診断の手がかりになることがあります。
そのほか貧血の有無や炎症マーカーなども重要な確認項目です。

画像検査

超音波検査やレントゲン検査では、胸やお腹に水がたまっていないか、リンパ節や臓器に腫れがないかを調べます。
水がたまっている場合は、その液体の性質を分析することで、原因を絞り込むための重要な手がかりとなります。

遺伝子検査

胸水や腹水などを採取できた場合は、ウイルスの遺伝子を調べるPCR検査を行うことがあります。
PCR検査はウイルスの遺伝子を直接検出できるため、診断の精度を高めるうえで重要な役割を果たします。

FIPによるぶどう膜炎の治療

診察を受ける茶トラ猫

FIPに伴うぶどう膜炎の治療で重要なのは、まずFIPそのものに対する治療を進めることです。
目の治療だけをしても、根本にあるFIPが治療されなければ症状は悪化してしまいます。

かつてFIPは治療法のない病気とされ、診断されればそのまま命を落とすケースがほとんどでした。
しかし近年、抗ウイルス薬の登場により、状況は大きく変わりつつあります。
これらの薬を使った治療で症状が改善し、寛解に至った猫の報告が国内外で増えてきました。

抗ウイルス薬はウイルスの増殖を直接抑える働きを持ち、全身の炎症が鎮まることで目のぶどう膜炎も改善に向かうケースが報告されています。
治療期間は一般的に数か月にわたることが多く、その間は定期的な血液検査や体重測定で経過を追いながら、治療を進めることが大切です。
ただし、すべての猫に同じ効果があるわけではなく、病気のタイプや進行度によって治療反応は異なります。
神経症状や重度のぶどう膜炎を伴うケースでは、治療が難しくなるケースも少なくありません。

抗ウイルス薬の効果を最大限に引き出すためには、できるだけ早い段階で治療を開始することが重要です。
FIPの治療は必ず獣医師に相談しながら進めましょう。

FIPそのものの治療を進めたうえで、目の痛みや炎症が強い場合には、点眼薬などを補助的に使用しながらぶどう膜炎もコントロールしていくことが大切です。
ただし、角膜に傷があるケースでは使えない薬もあるため、ご家庭にある目薬の自己判断での使用は避け、必ず獣医師の処方に従いましょう。

FIPは進行の早い病気であり、治療開始のタイミングがその後の経過を大きく左右します。異変を感じたら、1日でも早く受診することが愛猫の命を守る第一歩です。

FIPによるぶどう膜炎は早期発見がカギ

FIPによるぶどう膜炎は、気づくのが早ければ早いほど治療の効果が期待できます。
ぶどう膜炎を放置してしまうと、その間にFIPが急速に進行し、治療を始めても間に合わないケースが出てきます。

早期発見のために飼い主様にできることは、日頃から愛猫の「いつもの状態」を知っておくことです。
普段の目の状態や食べる量などを把握していれば、小さな変化にも気づきやすくなります。特に以下のような記録は、受診時に獣医師が状況を素早く判断するための大きな助けとなります。

  • 目の写真(同じ明るさで撮っておくと、濁りや充血の変化を比較しやすい)
  • 食欲の変化(いつから、どのくらい減ったか)
  • 体重の推移(自宅で量れる場合)
  • 呼吸の様子
  • 遊ぶ時間の変化

目の濁りや充血に少しでも全身の不調が重なったら、迷わず動物病院を受診してください。

また、多頭飼育のご家庭ではFIPそのものが他の猫にうつる心配は大きくありませんが、元になる猫コロナウイルスは便を通じて広がりやすい性質を持っています。
トイレをこまめに掃除する、食器や水皿を清潔に保つといった環境管理を日頃から意識しておくと安心です。

まとめ

猫の目の濁りや充血が続くとき、その背景にFIPによるぶどう膜炎が隠れている可能性があります。
ただし、同じような症状は他の目の病気や全身の疾患でも起こるため、見た目だけで判断せず、検査で原因を確かめることが大切です。
特に、食欲低下や発熱など全身の変化が重なる場合は、早めの受診をおすすめします。

サーカス動物病院グループではFIPのぶどう膜炎だけではなく、眼科治療に力を入れています。
気になる症状がある場合にはお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 目が白く濁っていたら、FIPと考えたほうがいいですか?

A. 目が白く濁る原因はFIPだけではありません。
白内障や緑内障など、さまざまな病気が原因として考えられます。
ただし、目の濁りに加えて発熱や食欲低下などの全身症状が重なっている場合は、FIPの可能性も含めた検査を早めに受けることをおすすめいたします。

Q. 片目だけの症状でも、全身の検査は必要ですか?

A. 外傷のように目だけの問題で済む場合もありますが、猫のぶどう膜炎は全身疾患の一部として現れることも珍しくありません。
片目の症状であっても、血液検査や画像検査で全身の状態を確認することが重要です。

Q. FIPは治る病気になったと聞きましたが、本当ですか?

A. 近年、抗ウイルス薬による治療で回復した猫の報告が増えており、以前より希望を持てる状況に変わりつつあります。
ただし、病気のタイプや治療を始めた時期によって結果は異なり、すべての猫に同じ効果が出るとは限りません。

Q. 目の炎症だけ治療すれば、目は治りますか?

A. FIPのような全身の病気が原因の場合、目の炎症だけを抑えても再発する可能性があります。
目の痛みを和らげる治療はもちろん欠かせませんが、根本にある病気への対応もあわせて進めることが大切です。。

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