「うちの猫の耳が、急にパンパンに腫れている」
愛猫のこのような変化に気づいたら、不安を感じる飼い主様が多いのではないでしょうか。
猫の耳の腫れは耳血腫(じけっしゅ)という病気のサインかもしれません。
耳血腫は、猫の耳の内部に血液がたまって大きく腫れ上がる病気です。
命にすぐ関わるケースは多くありませんが、そのまま放っておくと耳の形が変わってしまったり、何度もくり返すことがあります。
この記事では、猫の耳血腫について獣医師がわかりやすくお伝えします。
ぜひ最後までお読みいただき、耳血腫に対する理解を深めていただけますと幸いです。

| 📍 目次 ▼ 猫の耳血腫とは?耳介が腫れる仕組み ▼ 猫の耳血腫を引き起こすおもな原因 ▼ 耳血腫の代表的な症状 ▼ 猫の耳血腫の治療は? ▼ 耳血腫を予防するための自宅ケアと注意点 ▼ まとめ |
猫の耳血腫とは?耳介が腫れる仕組み
猫の耳血腫とは、耳介(じかい)の中に血液や液体がたまり、耳がふくらんでしまう病気です。
耳介とは、外から見える耳たぶのことで、皮膚と耳介軟骨という軟骨からできています。
耳血腫は何らかの原因で、耳介軟骨の中を通る細い血管が傷ついて出血することで発症します。
傷ついた血管から出た血液は、皮膚と軟骨のわずかな隙間に少しずつたまっていくことが多いです。
たまった血液が増えるにつれて、猫の耳が水風船のようにブヨブヨとふくらんでいくのが、耳血腫の特徴的な見た目です。
耳血腫は見た目の問題だけでなく猫にとって痛みや不快感を伴うため、気づいたら早めに対処することが愛猫の耳を守る第一歩になります。
猫の耳血腫を引き起こすおもな原因

猫が耳血腫になる最大の原因は、猫自身が耳を強くかいたり頭を振ったりする刺激によって、耳介の血管が傷つくことです。
ここでは、このような症状を引き起こす代表的な原因について詳しくみていきましょう。
外耳炎
耳血腫の原因としてもっとも多いのが、外耳炎です。
外耳炎とは、耳たぶから鼓膜の手前までの部分に炎症が起こる病気を指します。
外耳炎になると猫は強いかゆみを感じるため、
- 耳をかく
- 床に耳をこすりつける
- 頭を振る
といった行動を繰り返し、耳血腫を引き起こすことがあります。
猫の外耳炎のよくある原因は以下の通りです。
- 耳ダニ(ミミヒゼンダニ)の寄生
- 細菌や酵母菌(マラセチア)の感染
- アレルギー
- 耳の中の異物やできもの
これらの原因は単独で起こることもあれば、複数が重なって外耳炎を悪化させることもあるため注意が必要です。
たとえば、子猫や外で暮らしていた経験のある猫は耳ダニに感染しやすく、アレルギー体質の猫は季節の変わり目に炎症を繰り返しやすい傾向があります。
飼い主様が
「耳垢の量や色がいつもと違う」
「猫が頻繁に耳をかいている」
と感じたら、外耳炎が進行しているサインかもしれません。
中耳炎
中耳炎とは、鼓膜の奥にある中耳と呼ばれる部位に炎症が起きる病気です。
猫ではウイルスの感染や喉のポリープ(炎症によるしこり)などがきっかけで発症することがあります。
中耳炎になると耳の奥に強い痛みや違和感が生じるため、しきりに耳をかいたり頭を振ったりする行動が増え、その刺激が耳血腫を引き起こすことがあります。
中耳炎では以下のような症状が見られることが多いです。
- 頭を傾けたまま過ごす(斜頸)
- ふらついて真っすぐ歩けない
- 眼が左右に細かく揺れる(眼振)
- 痛みを示す
- 発熱する
これらは、耳の奥にある平衡感覚をつかさどる器官にまで炎症が及ぶことで起こる症状です。
また、喉ポリープが原因の猫では鼻づまりやいびきといった鼻や喉の症状を伴うこともあるため、耳だけでなく鼻や喉の状態もあわせて確認することが大切です。
外傷
猫の耳介に直接加わる物理的な外傷も耳血腫の原因として挙げられます。
たとえば、多頭飼育の環境では猫同士の喧嘩で耳を噛まれたり引っかかれたりすることがあり、その衝撃で耳介内部の血管が破れてしまうこともあります。
そのほか、アレルギーなどの痒み行動に伴う外傷が原因となることも少なくありません。
外傷が原因の耳血腫は、突然発症することが多いです。
耳血腫の代表的な症状
耳血腫は段階的に進行する病気です。
初期段階では目立った腫れがないことも多く、飼い主様が見過ごしてしまうケースも珍しくありません。
以下のようなサインが見られたら、耳血腫を疑いましょう。
- 猫の耳たぶがぷっくりと腫れている(片耳だけの場合が多い)
- 耳が熱を持っていたり、赤くなっていたりする
- 猫が耳を触られるのを嫌がる・怒る
- 猫が頭を何度も振る
- 猫が後ろ足で耳や首のあたりをしきりにかく
耳血腫の腫れは数時間から数日で一気に大きくなることもあるため、気づいたときにはかなり膨らんでいたという飼い主様も少なくありません。
気になった変化はメモや写真・動画で記録しておくと、獣医師へ正確に伝えやすくなります。
早めの受診が必要なサイン
次のような症状が猫に見られる場合は、症状の悪化と生活の質の顕著な低下を招く問題が隠れている可能性があるため、できるだけ早く動物病院を受診してください。
- 猫の耳の腫れが急激に大きくなった
- 痛みが強く、猫が触られるのを激しく嫌がる
- 猫に頭の傾きやふらつきがある
- 猫の元気や食欲が明らかに落ちている
- 膿のような耳だれや強いにおいが出ている
特にふらつきや頭の傾きは、中耳炎など耳の奥の病気が関わっているサインであり、早急な対応が求められます。
猫の耳血腫の治療は?

耳血腫は症状や段階によってベストな治療方法が違います。
代表的な治療方法について紹介していきましょう。
原因疾患の治療
耳血腫の治療で大切なのが、耳血腫を引き起こしている背景にある疾患への対処です。
耳血腫の多くは外耳炎などが背景にあり、猫が耳を強くかいたり頭を振ったりすることで発症します。
原因を放置したまま耳の腫れだけを治療しても、猫が再び耳を気にする行動を繰り返すことで、耳血腫が再発してしまう可能性が高いです。
原因に応じて、耳ダニであれば駆虫薬を、アレルギーであれば抗アレルギー薬などを組み合わせた治療を行い、耳のかゆみや炎症を根本からコントロールしていくことが重要です。
内科治療
耳血腫が確認された場合、状況に応じて耳にたまった液体を抜き取り、抗炎症薬や免疫調整剤が投与されます。
ただし、この処置は一度で完治せず、おおよそ1週ごとに複数回の通院が必要になるケースもあります。
痛みの強い場合では、鎮静処置が必要になることも少なくありません。
内科治療が奏功しても、耳の形状が変形する可能性があることには留意する必要があります。
外科治療
内科治療で再発を繰り返す場合や、重度の耳血腫の場合には外科治療が検討されます。
外科治療では、まず血腫のある部分を切開し、液体が排出されるようにした後に耳の内側と外側を縫い合わせることで、液体がたまるスペースを減らします。
外科治療は全身麻酔が必要なため、獣医師とよく相談して決めましょう。
耳血腫を予防するための自宅ケアと注意点
耳血腫を予防するうえで大切なのは、原因となる要因を予防する、あるいは早い段階で見つけて治療につなげることです。
日頃から飼い主様がちょっとした変化に気づける習慣をつけておくことが、耳血腫の発症を未然に防ぐ第一歩になります。
まずは、愛猫がリラックスしているときに、耳を軽くめくって以下の項目を確認する習慣をつけましょう。
- 耳の内側に赤みや腫れはないか
- 耳垢の色や量がいつもと違わないか
- 耳からいつもと違うにおいがしないか
- 左右の耳で形や厚みに差がないか
- 耳の周りにかき傷や脱毛がないか
これらの変化は、外耳炎が進行しているサインである可能性があります。
毎日の観察を続け、わずかな変化も見逃さないようにしましょう。
また、耳の見た目だけでなく、猫の行動にも注目してください。
以下のような仕草が増えてきたら、耳に何らかのトラブルが起きている可能性があります。
- 後ろ足で耳や首のあたりを頻繁にかく
- 頭をしきりに振る
- 床や家具に耳をこすりつける
- 耳を触られるのを嫌がる
- いつもより活動性がない
これらの行動は猫が耳のかゆみや痛みを感じているサインであり、放っておくと耳をかき続けることで耳血腫に発展するリスクが高まります。
行動の変化に気づいた時点で動物病院に相談することが、耳血腫を防ぐための有効な手段です。
定期的な動物病院でのケア
飼い主様によるセルフチェックに加えて、定期的に獣医師に耳の中を診てもらうことも予防には欠かせません。
ワクチン接種や健康診断のタイミングで耳のチェックもあわせて依頼しておくと、飼い主様が気づきにくい耳道の奥の異常も早期に発見できます。
アレルギー体質の猫や外耳炎を繰り返しやすい猫は、季節の変わり目や湿度が高い時期に症状が出やすい傾向があります。
そうした猫では、獣医師の指導のもとで食事の見直しや環境整備に取り組むことも有効です。
また、完全室内飼育を徹底することで、猫同士の喧嘩による外傷のリスクも大幅に減らせます。
飼い主様が
「最近うちの猫が耳をよくかく」
と感じた段階でご来院いただければ、耳血腫になる前に原因を治療できる可能性が高まります。
まとめ
猫の耳血腫は、耳介の中に血液や液体がたまって耳が腫れる病気です。
命に直結するケースは多くないものの、耳が変形したり再発を繰り返したりすることがあります。
耳血腫の治療で大切なのは、腫れを取るだけでなく、背景にある原因まで突き止めて同時に治療することです。
愛猫の耳の腫れや痒み、耳垢の変化に気づいたら、自己判断で対処せず早めにご相談ください。サーカス動物病院グループでは、些細な変化でもお気軽にお問い合わせいただけます。
よくある質問(Q&A)
Q.猫の耳血腫は自然に治りますか?
A.小さな耳血腫であれば、猫の体が時間をかけて液体を吸収し、自然に落ち着くこともあります。
しかし、自然に治るまでの間、猫は痛みや違和感を抱え続けることになり、耳の軟骨が厚く硬くなって形が変わってしまうリスクもあります。
また、外耳炎などの原因が残っていると再発しやすいため、自然に治るのを待たずに動物病院を受診することがおすすめです。
Q.耳血腫は手術しないと治りませんか?
A.すべての猫に手術が必要なわけではありません。
腫れが軽度であれば、針で液体を抜く処置と薬の投与で改善が期待できます。
一方で、液体が何度もたまる場合、耳の形を保ちたい場合には外科治療が適していることもあります。
愛猫の年齢や性格なども考慮して、獣医師と一緒に最適な治療法を選ぶことが大切です。
Q.耳血腫は再発しますか?
A.耳血腫は再発する可能性がある病気です。
特に耳ダニやアレルギーなどの原因疾患が十分に治療されていないと、猫が再び耳をかいたり頭を振ったりする行動を続けるため、耳血腫が繰り返し起こるリスクが高まります。
再発を防ぐためには、耳血腫の治療と並行して原因の病気を根本から治療し、定期的に獣医師のチェックを受けることが欠かせません。
Q.耳が腫れているときに家で耳掃除をしてもよいですか?
A.痛みや腫れがある状態の猫の耳を、飼い主様が無理に掃除することは避けてください。
耳道や鼓膜がどのような状態になっているかわからないまま綿棒などを使うと、炎症がさらにひどくなってしまう危険があります。
耳垢やにおいが気になる場合は、獣医師に相談しましょう。
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