犬の皮膚病でステロイドを使う理由|副作用を減らす工夫を獣医師が解説

#コラム #犬の病気 #病気や予防の情報 #皮膚科
投稿日:2024.10.07 更新日:2026.08.05
痒がる柴犬

「愛犬のかゆみが強く、動物病院でステロイドを処方されたけれど、副作用が心配」
犬の皮膚トラブルでステロイドを処方され、このような不安をもつ飼い主様は少なくありません。
ステロイドは犬の皮膚病で起こる強い炎症やかゆみを素早く抑える薬です。
しかし、使い方や期間によっては副作用が出る場合もあります。

この記事では、犬の皮膚病にステロイドが使われる理由や副作用を減らす工夫を解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、ステロイドに対する不安を払拭していただけると幸いです。

 📍 目次
▼ 犬の皮膚病でステロイドが処方されるのはなぜ?
▼ ステロイドの副作用と注意すべきサイン
▼ ステロイドを急にやめてはいけない理由と正しい減らし方
▼ ステロイド休薬後に皮膚病が再発した時の対処
▼ ステロイドに頼りすぎないための代替薬と治療の選択肢
▼ ステロイドの使用量を減らすために家庭でできるスキンケア
▼ まとめ

犬の皮膚病でステロイドが処方されるのはなぜ?

ステロイドとは、体内で分泌されるホルモンの総称です。
一般的にステロイドというと、副腎皮質という臓器から分泌されるグルココルチコイドのことを指します。
グルココルチイドにはさまざまな作用があるため、薬としても使われています。

犬の皮膚病でステロイドが処方されるおもな目的は、炎症とかゆみを短期間で抑えることです。
アトピー性皮膚炎や食物アレルギーなどが原因で皮膚に過剰な免疫反応が起こると、激しいかゆみや赤みが生じます。
その結果、犬が皮膚を掻きむしることで皮膚が傷ついたり、細菌などの二次感染へとつながりかねません。

ステロイドは、体の中で炎症を引き起こすさまざまな物質の産生を抑え込み、この悪循環を断ち切る働きを持っています。
ステロイドは炎症の流れ全体にブレーキをかけるため、強いかゆみにも素早い効果が期待できる点が大きな利点です。
たとえば、顔や足先を掻き続けて出血している犬では、まずつらい症状を落ち着かせることが大切です。
こうした場面で、最初の一手としてステロイドが選ばれることもあります。

ステロイドには

  • 内服薬
  • 注射薬
  • 塗り薬(外用薬)

などいくつかの種類があります。
ステロイドを正しく活用することは、犬の皮膚病治療を成功させるために重要です。

ステロイドの副作用と注意すべきサイン

首をかいている白いマルチーズ

ステロイドは皮膚病の治療に有効な作用がある反面、さまざまな副作用もあります。
ステロイドを正しく使うためには、この副作用について正しく知ることが重要です。
ここでは、全身に現れる変化と皮膚に現れる変化に分けて整理します。

全身に現れる変化

ステロイドは体全体の代謝やホルモンバランスに作用するため、皮膚以外の部分にもさまざまな変化が現れることがあります。
ステロイドによる全身への影響は以下の通りです。

  • 水をいつもより明らかに多く飲む
  • トイレの回数や尿量が増える
  • 食欲が急に旺盛になる
  • 息づかいが荒くなる
  • お腹が張って見える
  • 眠りが浅く落ち着きがなくなる

多飲・多尿や食欲増加は投薬開始から数日以内に現れやすく、用量を調整することで改善するケースも少なくありません。
さらに使用が長期にわたると、以下のような変化にも注意が必要です。

  • 筋肉量が低下し、足腰が細くなる
  • 免疫力が低下し感染症にかかりやすくなる
  • 血液検査で肝臓の値が上昇することがある
  • インスリンの働きが妨げられ、糖尿病になりやすくなる

特に肥満傾向の犬や高齢犬では糖尿病のリスクが高まります。
糖尿病は命に関わることもあるので、ステロイドは慎重に使うことが大切です。
ステロイドを使用する際は定期的に血液検査・尿検査を受け、肝機能や血糖値を定期的に確認しましょう。

皮膚に現れる変化

ステロイドの副作用は全身だけでなく、皮膚にも影響を及ぼすものがあります。
ステロイドの皮膚への副作用には以下のものがあります。

  • 皮膚が薄くなる
  • 毛が抜ける
  • 色素沈着(黒ずみ)が生じる
  • 皮膚にカルシウムが沈着して硬くなる石灰沈着が起こる

これらの副作用は、塗り薬を同じ部位に長期間使用した場合に起こりやすいです。

皮膚病の治療中に
「ステロイドを飲んでいるのに皮膚が悪くなった」
と感じた場合、副作用による変化が重なっている可能性も否定できません。
このような場合は動物病院で皮膚の状態を確認してもらうことが大切です。

ステロイドを急にやめてはいけない理由と正しい減らし方

ステロイドは、使用期間や量によっては急にやめると体調を崩す危険性があります。
薬として体の外からステロイドが継続的に入る状態が続くと、副腎の働きが一時的に抑制され、ホルモン産生が低下します。
その状態で急に薬を中断すると、体に必要なホルモンが不足し、以下のような症状が見られることがあるので注意しましょう。

  • 元気消失
  • 嘔吐
  • 下痢
  • ふらつき

場合によっては命に関わる事態につながるリスクもあるため、ステロイドをやめる際は細心の注意が必要です。

安全にステロイドを減らすためには、獣医師の指示のもとで少しずつ投与量を減らしていくことが大切です。
また、症状が落ち着いてきた段階で1日おきの投与へ切り替えることもあります。
ステロイドを少しずつ時間をかけて減らすことで、副腎への影響を軽減できます。

ステロイド休薬後に皮膚病が再発した時の対処

ステロイドを減らした後や休薬した後に、皮膚病の症状が再び悪化するケースは珍しくありません。
再発の原因はさまざまですが、もともとのアレルギー体質が根本にあるケースが多いです。アトピー性皮膚炎ではステロイドで一時的に症状を抑えても、薬を中止すれば炎症やかゆみが戻る可能性があります。
また、季節の変化や皮膚バリア機能の低下が重なって再燃が起こる場合も少なくありません。

皮膚病が再発した際にもっとも避けたいのは、以前処方された薬を自己判断で再開することです。
前回と同じ薬が適切とは限らず、皮膚の状態や二次感染の有無によって治療方針が変わることがあります。
かゆみがぶり返したり、赤みが広がってきたなどの変化に気づいたら、早めに動物病院を受診しましょう。

早い段階で受診することで、ステロイドの使用量を最小限に抑えながら症状をコントロールできる可能性があります。
皮膚の状態が悪化してからでは、結果的により強い治療が必要になるケースもあります。
また、皮膚病の再発を繰り返す場合は、代替薬への切り替えやスキンケアの見直しも含めて獣医師と治療計画を再検討しましょう。

ステロイドに頼りすぎないための代替薬と治療の選択肢

犬の皮膚病の治療薬にはステロイド以外にもいくつかの選択肢があります。
特にアトピー性皮膚炎では、複数の治療薬を選べる時代になりました。
どの薬が適しているかは、以下の要素を総合的に判断して決定されます。

  • 症状の強さ
  • 年齢
  • 感染の有無
  • 持病の有無
  • 投薬のしやすさ
  • 費用
  • 通院頻度

また、代表的な代替薬には以下のようなものが挙げられます。

  • オクラシチニブ:ステロイドとは異なるメカニズムでかゆみを抑え、副作用が比較的少ないのが特徴です。
    ステロイドと同様に数時間で効果が出るため、急性期などかゆみが強い場合に使用されます。
  • ロキベトマブ:かゆみに関わる特定の物質を標的とした注射薬です。
    約1か月に1回の投与で効果が持続し、投薬が難しい犬などで有効です。
  • イルノシチニブ:最近発売された比較的新しい内服薬です。
    1日1回の投与で効果が持続しやすいです。
  • シクロスポリン:体内の過剰な免疫反応を調整する内服薬です。
    効果が出るまで4〜6週間かかるため、急性期にはステロイドと併用される場合もあります。

治療をする際に重要なのは、「ステロイドか、それ以外か」という二択で考えないことです。
急性期にはステロイドでつらいかゆみを抑え、落ち着いてから代替薬やスキンケアを組み合わせるなど、段階的に治療の役割を変えていくことが大切です。

ステロイド以外に使われる犬の痒み止めについては以下の記事もチェックしてみてください。
犬の痒み止めって何があるの?|犬のアレルギー性皮膚炎に使う痒み止めの薬について解説

ステロイドの使用量を減らすために家庭でできるスキンケア

犬の皮膚病では日常的なスキンケアを続けることで、ステロイドの使用量を減らし、愛犬の皮膚状態を安定させることが期待できます。
薬だけに頼らず、毎日のケアを組み合わせることが皮膚病の長期コントロールに欠かせません。

シャンプーによる洗浄

アレルギー性皮膚炎では花粉やハウスダストなどのアレルゲンが皮膚に付着してかゆみが悪化することがあります。
週1〜2回のシャンプーでアレルゲンを洗い流すことが効果的です。
アレルギー性皮膚炎が背景にある場合には低刺激で保湿性の高いシャンプーや入浴も推奨されます。
愛犬のシャンプーをする際は動物病院で皮膚に合った製品と頻度を確認しましょう。
シャンプー後は蒸れを防ぐためにしっかり乾かすことも大切です。

保湿ケア

アトピー性皮膚炎の犬は皮膚バリア機能が低下しているため、保湿も大切です。
保湿を行うことで皮膚のバリア機能を強化することができます。
入浴後に保湿剤を塗布する習慣をつけると、乾燥によるかゆみを軽減し、ステロイドの使用頻度を下げることにつながります。

ノミ・マダニ予防

犬はノミ・マダニなどの寄生虫の感染で皮膚トラブルが起こることもあります。
ノミアレルギー性皮膚炎では少数のノミでも強いかゆみを起こすため、室内飼いでも通年の予防が欠かせません。

食事管理

食物アレルギーが疑われる場合は、獣医師の指導のもとで原因を絞り込むことが有効です。市販フードを何となく替えるだけでは正確な判断が難しく、決められた期間・指定された食事だけで反応を確認する必要があります。
おやつや歯みがきガムも影響する場合があるため、注意しましょう。

生活環境の整備

犬の皮膚トラブルを防ぐには住環境の整備も大切です。
具体的には以下のような対策を行いましょう。

  • 掃除機がけの頻度を上げる
  • 布製品をこまめに洗濯する
  • 換気を増やす

このような環境の整備を行うことでアレルゲンを減らすことも症状の安定に役立ちます。

まとめ

犬の皮膚病で使うステロイドは、強い炎症やかゆみを素早く抑える一方で、さまざまな副作用に注意が必要な薬です。
大切なのは、
「怖いから避ける」
「効くから漫然と続ける」
と決めつけず、愛犬の症状や検査結果に合わせて治療計画を調整していくことです。
飲水量や皮膚の変化を記録しながら、定期的に皮膚の状態をチェックしてもらいましょう。

サーカス動物病院グループでは、飼い主様のお気持ちも含めて丁寧にお伺いし、愛犬に最適な治療を一緒に考えてまいります。

よくある質問(Q&A)

Q. ステロイドは犬にとって危険な薬ですか?

A.ステロイドは使い方によって大きな助けにも副作用の原因にもなる薬です。
強いかゆみや炎症を早く抑える利点がある反面、量や期間が増えるほど注意が必要になります。
ステロイドは愛犬の状態に合わせて獣医師と調整していくことがもっとも安全な使い方です。

Q. 水をよく飲むようになったら副作用ですか?

A.ステロイドの影響で多飲多尿が見られることはありますが、腎臓病・ホルモンの病気など他の原因で飲水量が増える場合もあります。
多飲多尿が気になる場合は動物病院に相談し、状況に応じて各種検査を受けることが大切です。

Q. かゆみが治まったら自分の判断で薬をやめてもよいですか?

A.自己判断での薬の中止は避けてください。
特に数日以上続けている場合や投与量が多い場合は、急な中断でステロイド離脱症状や皮膚病の再燃が起こるリスクがあります。

Q. ステロイドを使わない治療法はありますか?

A.代替薬や補助療法として、以下のような選択肢が存在します。

  • オクラシチニブ
  • ロキベトマブ
  • イルノシニチブ
  • シクロスポリン
  • 薬用シャンプー
  • 保湿ケア
  • ノミ・マダニ予防
  • 食事管理

ただし、すべての犬に同じ治療が合うわけではなく、感染の有無や症状の強さを確認したうえで選択する必要があります。

Q. スキンケアだけで皮膚病は治りますか?

A.軽い乾燥や汚れが中心であればスキンケアで改善するケースも少なくありません。
ただし、アレルギー性皮膚炎など背景に基礎疾患がある場合は、薬物療法との併用が必要になる場合があります。
スキンケアは、薬の使用量を減らす助けや再発対策など補助的な役割であることを理解しておきましょう。湿し状態を整えることも有効です。

🎪サーカス動物病院グループの皮膚科の詳細はコチラからご覧いただけます。

📱 WEB予約
藤沢菖蒲院予約藤沢菖蒲院予約
横浜ゆめが丘院予約横浜ゆめが丘院予約
湘南辻堂院予約湘南辻堂院予約

💡 予約状況が確認でき、24時間いつでも受付可能なWEB予約がオススメです。