犬の痒み止めにはどんな種類がある?|アレルギー性皮膚炎の薬の特徴を解説

#コラム #犬の病気 #病気や予防の情報 #皮膚科
投稿日:2024.09.29 更新日:2026.07.11

愛犬が何度も体を掻いたり、なめている様子を見たことはありませんか?
犬の痒みの原因で比較的よくみられるのがアレルギー性皮膚炎です。
アレルギー性皮膚炎では皮膚トラブルを抑えるために痒み止めが処方されることがあります。
痒み止めの薬にはいくつかの種類があり、それぞれ使い方や副作用が異なるため、特徴を理解しておくことが大切です。

この記事では、犬で用いられるおもな痒み止めの特徴をわかりやすく解説します。
愛犬の皮膚トラブルでお悩みの方は最後までお読みいただき、今後の参考にしてみてください。

 📍 目次
▼ 痒み止めを使う前に痒みの原因を正しく理解しよう
▼ 犬のアレルギー性皮膚炎に使われる痒み止めとは
▼ アレルギー性皮膚炎は痒み止めによる早めの対処が大切
▼ 犬の痒み止めを使うときに知っておきたい注意点
▼ 痒み止めの効果を引き出す日常ケアと環境管理の方法
▼ まとめ

痒み止めを使う前に痒みの原因を正しく理解しよう

足先を舐める柴犬

犬が痒がっているとき、まず重要なのは「何が痒みを引き起こしているか」を正確に把握することです。
痒みの原因にはノミ・ダニなどの寄生虫や細菌感染によるものもありますが、犬によくみられるのがアレルギー性皮膚炎です。

犬のアレルギー性皮膚炎には大きく「アトピー性皮膚炎」と「食物アレルギー」の2種類が存在します。
アトピー性皮膚炎はハウスダスト・花粉などの環境アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)が引き金となり、発症することが多い疾患です。
柴犬やフレンチブルドッグなど特定の犬種で比較的よくみられます。
花粉の季節に症状が悪化するなど、時期によって波がある点も特徴として挙げられます。

一方、食物アレルギーは牛肉・鶏肉などのタンパク質が原因となり、症状に季節変動がほとんどありません。
また、軟便や嘔吐などの消化器症状を伴う場合もあります。

アレルギー性皮膚炎では

  • 足先
  • お腹

を痒がることが共通して多く、外耳炎を繰り返す犬も珍しくありません。
愛犬に次のような様子が見られる場合は、アレルギー性皮膚炎の可能性があります。

  • 掻く・なめる行動が数日以上続いている
  • 皮膚が赤くなっている
  • 毛が抜ける
  • かさぶたや出血がある

犬に痒みがみられた場合、動物病院では発症時期や食事内容などを丁寧に確認したうえで、原因を絞り込んでいきます。
アレルギー性皮膚炎は長期的な管理が必要になることも多いため、早めに原因を特定することが大切です。

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犬のアレルギー性皮膚炎に使われる痒み止めとは

犬のアレルギー性皮膚炎では、おもに

  • ステロイド
  • オクラシチニブ
  • イルノシチニブ
  • ロキベトマブ
  • シクロスポリン

の5種類の痒み止め薬が使われています。
薬の形も飲み薬(錠剤)と注射薬などがあり、愛犬の症状の強さや生活状況に合わせて使い分けることも可能です。

どの薬もアレルギー性皮膚炎を根本から治すものではありませんが、痒みを抑えることで皮膚トラブルの悪化を防ぎます。
ここではそれぞれの痒み止めの使い方や副作用の違いをみていきましょう。

ステロイド

ステロイドは体の中で作られるホルモンと似た働きを持ち、炎症や過剰な免疫反応を幅広く抑える薬です。
痒み止めとしての歴史が長く、効き目が速い点が最大の強みです。
ステロイドは数時間〜1日以内に痒みが和らぐため、まず炎症を落ち着かせたい場面で活躍します。

ただし、ステロイドを長期間使い続けると

  • 多飲多尿
  • 食欲増加
  • 免疫力低下
  • 糖尿病
  • クッシング症候群

などの副作用が出る可能性があります。
特に糖尿病やクッシング症候群は命に関わることもあるので注意が必要です。
そのため、獣医師の指導のもと、用法・用量を正しく使用することが大切です。

オクラシチニブ

オクラシチニブは、犬のアレルギー性皮膚炎のために開発された飲み薬です。
炎症によって発生した「痒みを起こす物質」の働きをピンポイントで抑える作用があります。
ステロイドと比べて全身への影響が少なく、長期的にも使いやすい薬です。
オクラシチニブは飲み始めて数時間以内に痒みが和らぐケースも多く、即効性と安全性のバランスに優れています。
一方で、作用時間が短く、基本的には毎日の投薬が必要になることや薬の価格がステロイドよりも高いことがデメリットです。

オクラシチニブの副作用は、嘔吐や下痢などの消化器症状が挙げられますが、命に関わるような重篤なものは少ない傾向にあります。
まれですが、膀胱炎や白血球減少の報告もあるので、投薬中は定期的なモニタリングが必要です。

イルノシチニブ

イルノシチニブは2024年に登場した新しいタイプの飲み薬で、オクラシチニブと同じく痒みを起こす物質の働きを抑える作用があります。
オクラシチニブとの大きな違いは、1日1回の投与で効果が持続しやすい点です。

また、オクラシチニブでは十分に痒みが抑えられなかった犬にも効果を発揮する可能性があるとされています。
イルノシチニブは従来の痒み止めではコントロールが難しかったケースへの新たな選択肢として期待されている薬です。

イルノシチニブは副作用も少なく、安全性が高いとされています。

ただし、発売からまだ日が浅く、長期使用に関するデータは蓄積途中の段階にあります。
イルノシチニブは獣医師の指導のもと、適切に使用することが大切です。

ロキベトマブ

ロキベトマブは、犬のアトピー性皮膚炎のために開発された注射薬で、痒みを起こす物質の働きをピンポイントで抑えます。
ロキベトマブの最大の特徴は約1ヶ月間効果が続く注射であるため、毎日の投薬が不要な点です。
薬を飲ませるのが難しい愛犬や、飲み薬だけでは痒みがコントロールしにくい場合に心強い選択肢となります。

副作用はほとんどありませんが、まれにアナフィラキシーショックという命に関わるアレルギー反応が出ることがあります。

また、ロキベトマブには

  • 効果が出るのに時間がかかる(数日〜1週間程度)
  • 体質によって効果が出ない子もいる
  • 食物アレルギーに対しては効果がない

などのデメリットがあるので注意が必要です。

シクロスポリン

シクロスポリンは長期で付き合っていく必要のあるアレルギー性皮膚疾患において「なるべく薬を減らす」という観点では減薬を実施しやすい薬剤です。

免疫抑制剤の一つで、過剰に働いている免疫のバランスを整え、炎症を抑えるタイプの飲み薬です。
アレルギーは、本来害のないものを害のあるものと体が認識してしまい、過剰に免疫反応が起きてしまうことにより発生します。
そのため、シクロスポリンで免疫を抑制することが治療になります。

シクロスポリンは効果が出るまでに4〜6週間ほどかかるため、すぐに痒みを止めたいという急性期の場面には向きません。
また注意が必要な点として、飲み始めの時期に嘔吐・下痢といった消化器症状が出やすいことと、必要な免疫反応を抑えてしまうことにより、感染症にかかりやすくなる可能性があることなどが挙げられます。

アレルギー性皮膚炎は痒み止めによる早めの対処が大切

笑っている白いマルチーズ

アレルギー性皮膚炎による痒みは
「少し掻いているだけだから」
と放置すると、皮膚の状態が急速に悪化する恐れがあります。
アレルギー性皮膚炎では、痒み止めを含めた早期対応が皮膚を守るうえで非常に重要です。

犬は痒みを感じると本能的に掻いたりなめたりする行動を繰り返し、この行為が続くと皮膚のバリア機能が低下します。
バリアが損なわれた皮膚では細菌やマラセチアなどの常在菌が増殖しやすくなり、膿皮症やマラセチア性皮膚炎などの二次感染へと繋がりかねません。
二次感染が起きると、アレルギーの治療に加えて感染症の治療も必要になり、治療期間が長引くことになります。

さらに皮膚トラブルが長引くと皮膚が厚く硬くなる「苔癬化(たいせんか)」という状態に移行してしまい、元の健康な皮膚に戻りにくくなるケースも珍しくありません。
皮膚の症状が軽いうちに、痒みや炎症を抑えることが重要です。

犬の痒み止めを使うときに知っておきたい注意点

犬の痒み止めは正しく使えば愛犬の生活の質を大きく改善できる一方で、使い方を誤ると思わぬトラブルにつながる場合があります。
ここでは痒み止めを使ううえで飼い主様が押さえておきたいポイントを紹介します。

人用の痒み止めは犬に使わない

愛犬が痒がっているとき、手元にある人用の痒み止め薬やクリームを
「少しだけなら」
と使いたくなるかもしれません。
しかし、人用の薬には犬にとって有害な成分が含まれていることがあり、皮膚の状態が悪化したり、薬を舐めて中毒を起こしたりする危険性があります。

また、市販の薬で一時的に症状が抑えられても、動物病院への受診が遅れ、適切な診断や治療の機会を逃してしまうことにもなりかねません。
痒み止めは必ず獣医師が処方した犬用の薬を使用しましょう。

自己判断での増量・中止は避ける

痒み止めは動物病院で指示された通りに内服することが大切です。
投薬を急にやめてしまうと、症状が再燃してしまうことがあります。
また、ステロイドは過度の使用や長期使用によって、皮膚が薄くなるなどのステロイド皮膚症を起こすリスクもあります。
薬の効果や副作用などは犬によって異なるため、気になることがあれば獣医師に相談したうえで調整を行いましょう。

定期的な通院で経過を確認する

アレルギー性皮膚炎は長期的な管理が必要な病気です。
痒み止めが効いて症状が落ち着いていても、季節の変化や体調の変動によって状態が変わることがあります。
定期的に動物病院で皮膚の状態をチェックしてもらうことで、薬の種類や量を最適な状態に保つことができます。

痒み止めの効果を引き出す日常ケアと環境管理の方法

食器の前で外を見るミニチュアダックスフンド

犬のアレルギー性皮膚炎は、症状を完全になくすことが難しい病気です。
そのため、痒みをなるべく抑えながら、うまく付き合っていくことが重要です。

また、痒み止めの効果を最大限に引き出すためには、以下のような日常のスキンケアや環境管理が大きな役割を果たします。

シャンプーをする

シャンプーは、皮膚に付着したアレルゲンを洗い流し清潔な状態を保つことで症状の緩和が期待できます。
低刺激・保湿成分配合の動物用シャンプーを週1〜2回程度使用し、洗浄後はしっかりと乾かすことが大切です。
ただし、乾かす際にドライヤーの熱を長時間あてすぎると皮膚への刺激となり、かえって痒みを誘発することがあります。
シャンプー後は吸水性の高いタオルでしっかり水分を拭き取ったうえで、ドライヤーは温度を低めに設定し風の力で乾かすことを意識しましょう。

保湿ケアを行う

保湿ケアもアレルギー性皮膚炎において重要な取り組みのひとつです。
保湿を行うことで、アレルギー性皮膚炎による皮膚のバリア機能の低下を防ぐことが期待できます。
保湿は動物用の保湿スプレーやクリームを用い、脇・腹部など症状が出やすい部位を重点的に使用しましょう。

アレルゲンとの接触を減らす

環境アレルゲンの管理として、こまめな掃除や空気清浄機の活用が有効です。
花粉の多い季節には散歩後に濡れタオルで体を軽く拭くだけでも、室内へのアレルゲンの持ち込みを減らせます。

食物アレルギーが疑われる場合はアレルゲン物質の少ないフードの活用が推奨されており、市販のおやつの成分表示にも注意を払うことが大切です。

腸内環境のケアをする

近年では、腸内環境とアレルギー性皮膚炎との関連も注目されています。
腸内には免疫細胞の多くが集まっており、腸内フローラ(腸内の細菌バランス)が乱れると免疫の働きにも影響を及ぼすことが分かってきました。
腸内環境を整えるサプリメントなどでアレルギー症状の緩和につながるという報告も増えており、補助療法として取り入れるケースが広がりつつあります。

まとめ

犬のアレルギー性皮膚炎に使われる痒み止め薬には、さまざまなものがあり、それぞれ使い方や副作用が異なります。
痒み止めは犬の症状や体質などに合わせて適切な薬を選ぶことが大切です。

愛犬に掻く・なめる行動や皮膚の赤みが続くときは早めにご相談ください。
サーカス動物病院グループでは飼い主様のお話と愛犬の様子を丁寧に伺い、無理のない治療方針を一緒に考えてまいります。

犬の痒み止めに関するよくある質問

Q. 痒み止めを飲めばアレルギー性皮膚炎は治りますか?

A. 痒み止めは痒みや炎症を和らげる重要な治療手段ですが、薬だけで原因が解決するとは限りません。
アレルギー性皮膚炎では食物への反応、環境要因などを確認し、愛犬に合った管理を総合的に続けることが大切です。

Q. 痒みがある日に以前処方された薬を使っても大丈夫ですか?

A. 以前の処方薬であっても、今回の痒みの原因や愛犬の体調が当時と同じとは限りません。
特にステロイドや免疫に作用する薬は、自己判断で再開・中止することにリスクが伴います。必ず動物病院へ相談してから使用してください。

Q. シャンプーや保湿だけで痒みを改善できますか?

A. シャンプーや保湿は皮膚の状態を整える助けになりますが、強い炎症が存在する場合にはそれだけで十分な効果は得られにくいです。
洗浄成分や使用頻度も皮膚の状態に応じて異なるため、獣医師の指示を受けたうえで実施してください。

Q. 受診時にどのような情報を伝えると診察に役立ちますか?

A. 皮膚の痒みで動物病院を受診する際は

  • 痒みがある期間
  • 痒みがある部位
  • 季節や食事との関係
  • 現在使用中の予防薬やフード

などをメモにまとめていただくと診察がスムーズに進みます。
痒みが出ている最中の動画や皮膚の写真をお持ちいただくと、診察室では見えにくい普段の行動を共有でき、より正確な判断につながります。ってどの治療がベストか、当院にご相談ください。

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