お知らせ news

犬の円形脱毛|考えられる病気や治療法について獣医師が解説

2025.08.24

犬の体に円形脱毛を見つけたことはありますか?

「犬が体を舐めていて、その部分が円形に脱毛している。」
「円形に脱毛している部分が赤くなっていて痒そう。」
「痒みはなさそうだが、円形の脱毛がある。」
こんな悩みをお持ちの飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。
犬の円形脱毛には様々な原因があり、原因によって対処法も異なります。

今回は犬の円形脱毛について解説します。
犬に円形脱毛があるときに気をつけるべきことや日頃のケアについて理解を深めていただければ幸いです。

首をかいている雑種犬

犬の円形脱毛で考えられる病気

犬の円形脱毛で考えられる病気には

  • 膿皮症
  • 急性湿疹(ホットスポット)
  • 皮膚糸状真菌症

などがあります。
それぞれについて解説いたします。

膿皮症

膿皮症は皮膚に細菌が増殖することによっておこる皮膚の病気です。
膿皮症の症状は

  • 皮膚の赤みや痒み
  • 脱毛
  • ニキビのような膿疱
  • カサブタやフケ

などが挙げられます。
好発犬種はフレンチブルドッグなどの短頭種やピンシャーなどです。

急性湿疹(ホットスポット)

急性湿疹とは梅雨時期や雨の日の散歩など高温多湿な環境で急激に悪化する皮膚炎です。
別名「ホットスポット」といいます。
急性湿疹は短時間で急に発症するのが特徴で、例えば

「朝はなんともなかったのに、散歩から帰ってきたら急に痒がり始めた。」

というような症状の経過を示します。
他の症状には

  • 赤くジュクジュクした皮膚
  • 皮膚の痒み
  • 皮膚の脱毛

などがあります。
急性湿疹は被毛が密な犬種で発症しやすいです。
好発犬種はゴールデンレトリバーや柴犬などです。

皮膚糸状真菌症

皮膚糸状真菌症は皮膚に真菌、つまり「カビ」が感染してしまう病気です。
他の皮膚病との大きな違いは、痒みを伴わないことです。
「円形脱毛を発見したが、犬は痒がっていないし気にしていない。」
このような場合は皮膚糸状真菌症の可能性があります。
好発犬種はヨークシャーテリアやパグなどです。
また、皮膚糸状真菌症は免疫力の低下している犬で感染リスクが高いため子犬や体調不良の犬でも発症しやすいといわれています。
皮膚糸状菌症は人間にも感染します。
皮膚糸状菌症を疑う犬とのふれあいには注意してください。

犬の円形脱毛の治療

ここからは犬の円形脱毛の治療について解説します。
膿皮症や皮膚糸状菌症の治療は抗生物質や抗真菌薬の内服または外用薬が効果的です。
シャンプーや保湿などのスキンケアも併せて行うと皮膚のバリア機能が回復し、治療効果が高まります。
痒みや炎症が強い場合はステロイドの内服を行うこともあります。
また皮膚糸状真菌症では毛に存在している糸状菌の排除を目的として毛刈りを行うこともあり、これは同居動物や人間への感染拡大の予防にも効果的です。
犬の円形脱毛では治療に時間がかかることが多く、2〜3ヶ月投薬を継続しなければならないこともあります。
症状が良くなってきたからといって自己判断で治療をやめてしまうと、抗生物質の効かない耐性菌ができたり再発がおこったりして余計に厄介なことになりかねません。
治療は獣医師の指示に従って根気強く行うことが大切です。

犬の円形脱毛の予防

シャンプーをされる柴犬

犬の円形脱毛を予防するには

  • スキンケア
  • 室温と湿度の管理
  • 飼育環境の掃除
  • 外部寄生虫の予防
  • 免疫力の強化

などの方法が考えられます。
それぞれについて解説します。

スキンケア

スキンケアとはシャンプーや保湿を行うことです。
日常から犬のスキンケアをしてあげることで円形脱毛の原因となる皮膚病のリスクを下げることができます。
シャンプーはあらかじめ泡立てて爪を立てずに優しく洗ってあげてください。
シャンプー後は皮膚が乾燥しやすいため、保湿をセットで行うと良いです。
保湿をすることで皮膚のバリア機能が正常に働くのを助け、皮膚の健康が保たれやすくなります。

室温と湿度の管理

室温と湿度を調節してあげることで皮膚病のリスクを下げることができます。
細菌や真菌は暖かく湿った環境で増殖しやすいです。
急性湿疹も湿度が高いと発症しやすいとされています。
犬の飼育環境は室温20〜25°C、湿度40〜60%程度に保つと理想的です。

外部寄生虫の予防

急性湿疹はアレルギーが発症のきっかけになるともいわれています。
ノミやダニなどの外部寄生虫は犬にアレルギーをおこすこともあるため、それらの予防を行うことは円形脱毛の原因となる急性湿疹を予防することにもつながります。

免疫力の強化

皮膚病と免疫力には強い関連があります。
近年は犬でも人間と同じように「腸活」が注目されています。
生きた腸内細菌やその腸内細菌の餌となるアミノ酸などをサプリメントなどで摂取することで腸内環境が改善され、免疫力が高まります。
その結果皮膚のバリア機能も保たれ、皮膚病の予防につながります。

まとめ

耳をかくパグ

いかがでしたか?
犬の円形脱毛には様々な原因があります。
膿皮症や急性湿疹は痒みを伴い、犬に不快感を与えます。
症状が悪化すると治療も難航することが多いです。
痒みは無くとも皮膚糸状菌症のように人に感染する病気もあるため、犬の円形脱毛を見つけたらなるべく早く動物病院に連れて行きましょう。

当院は皮膚科診療に力を入れています。
犬の円形脱毛についてお悩みの際はぜひ当院にご相談ください。