犬のステロイド皮膚症とは|ステロイドはヒーローにも悪役にもなる?
ステロイドと聞いてどんなイメージを持ちますか?
「なんとなく強い薬っぽいな。」
「副作用が心配な感じがする。」
「万能薬でしょ!」
様々なイメージがあると思います。
ステロイドは無くてはならない薬である一方で慎重に使用しなければならない薬でもあります。
今回はステロイドの副作用によって発症するステロイド皮膚症について解説します。
ステロイドのいい面と悪い面を知っていただき、ステロイドとの正しい付き合い方を考えてみましょう。
📍 目次 ▼ ステロイドとは |
ステロイドとは
ステロイドは薬の一種です。
犬のアレルギー性皮膚疾患や腸炎の治療ではよく使われます。
幅広い病気に効果を表すので優秀な薬ですが、その分副作用も強く安易な使用は禁物です。
ステロイドは正確にはステロイドホルモンのことです。
人や犬の体内では生殖腺や副腎という臓器から分泌されていて、さまざまな種類のステロイドホルモンが存在します。
その中でも、医薬品として最も一般的なものが糖質コルチコイド系のステロイドホルモンです。
ここからは糖質コルチコイド系のステロイドについて解説いたします。
ステロイドの作用
ステロイドには
- 炎症を抑える
- 痒みを抑える
- 免疫を抑える
などの作用があります。
この作用を応用して
- 痒みを伴う皮膚炎
- 腸炎
- 慢性肝炎
- リンパ腫
など幅広い疾患に対して使用されます。
ステロイドの利点には
- 早く効果が現れる
- しっかりと効く
- 安価である
などがあります。
ステロイドの副作用
ステロイドの副作用には
- 多飲多尿
- 免疫力の低下
- 肝臓・胆嚢への負担
- 皮膚への影響
などがあります。
ステロイドの外用薬によって皮膚におこる疾患をステロイド皮膚症といいます。
ここからはステロイド皮膚症について詳しくお話いたします。
ステロイド皮膚症とは
ステロイド皮膚症はステロイドの過度な使用によっておこる病気です。
症状は
- 皮膚が薄くなる
- フケが多くなる
- 毛穴が広がって汚れが溜まる
- 皮膚が硬くなる
- 感染がおこりやすくなる
などがあります。
ステロイドを使っているときにこのような症状がみられたらすぐに動物病院を受診しましょう。
ステロイド皮膚症の診断
ステロイド皮膚症と診断するためには大事なポイントが2つあります。
- ステロイドの使用歴
- 他の病気でないこと
を調べることです。
それぞれについてお話しします。
ステロイドの使用歴
ステロイド皮膚症はステロイドの長期使用が原因です。
- 塗り薬にステロイドを使っているか
- 飲み薬にステロイドを使っているか
- いつから使用しているか
などの情報を獣医師に伝えることが重要です。
他の病気でないことの証明
ステロイド皮膚症の症状は他の病気でもみられることがあるので検査が必要です。
他の病気が隠れていると、ステロイドの使用をやめるだけでは症状が良くならない場合があります。
同じような症状を示す病気としては副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)が考えられます。
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)は体内で糖質コルチコイド(ステロイド)が過剰に分泌され続けてしまう病気です。
クッシング症候群の症状は
- 多飲多尿
- 左右対称性の脱毛
- 皮膚や筋肉の萎縮・菲薄化
- 腹部膨満
などです。
診断は
- 血液検査
- エコー検査
などが有用です。
これらの症状や検査からクッシング症候群ではないことを証明することで、ステロイド皮膚症の診断がより確実なものとなります。
逆に検査の結果、クッシング症候群であれば治療を行う必要があります。
ステロイド皮膚症の治療
ステロイド皮膚症の治療は、何よりもまずステロイドの使用をやめることです。
ステロイドはいきなり投薬をやめるとステロイドによって抑えられていた病気がぶり返したり、体内のステロイドホルモンのバランスが崩れたりします。
徐々に量を減らしていく必要がありますね。
ステロイドの使用量を減らすために
ステロイドの副作用を考慮すると、なるべく使用量を減らしたいところですよね。
なるべく元の症状をぶり返すことなくステロイドの量を減らすためにはどうしたら良いのでしょうか。
犬アトピー性皮膚炎を例にステロイドの使用量を減らす方法をご紹介いたします。
犬アトピー性皮膚炎でステロイドを減らす
犬アトピー性皮膚炎は免疫の異常が原因であり、強い痒みを伴うためステロイドが非常によく効きます。
ステロイドの効果がとても良く現れるために長期的に使用されてしまいがちですが、ステロイドの使用量を減らすための方法がいくつかあります。
- ステロイドに代わる薬を使う
- スキンケア
- サプリメント
などです。
それぞれについて解説します。
ステロイドに代わる薬を使う
犬アトピー性皮膚炎の薬にはステロイドの他にも様々なものがあります。
代表的な薬は
- オクラシチニブ
- ロキベトマブ
- シクロスポリン
などです。
免疫を調整したり、痒みの発生サイクルをとめたりして症状を緩和するものです。
これらの薬を合わせて使用することでステロイドの使用量を減らせることが多いです。
しかしこれらの薬にも副作用が存在します。
症状を見ながら最適な組み合わせを見つけていく必要があります。
スキンケア
犬アトピー性皮膚炎は皮膚のバリア機能の低下によって症状が悪化します。
皮膚を保湿することでバリア機能の改善が目指せます。
それによって症状も緩和できると考えられているのでステロイドの使用量を減らせる可能性があります。
サプリメント
腸内環境と犬アトピー性皮膚炎には密接な関係があるといわれていて、腸活として注目されています。
腸は免疫機能の重要な役割を担っているため、腸内環境が整うと免疫機能も整い、皮膚の健康が保たれるということです。
腸活の方法は
- 乳酸菌などの善玉菌を投与するプロバイオティクス
- オリゴ糖などの善玉菌の栄養素となる成分を投与するプレバイオティクス
- 善玉菌が生み出す成分や善玉菌の抽出物を投与するバイオジェニクス
などがあります。
これらは組み合わせることによってより高い効果を示すといわれています。
近年はたくさんの種類のサプリメントが開発されています。
プロバイオティクスのみ、プレバイオティクスのみといったものもあれば、3つ全てに対応しているサプリメントもあります。
価格や与えやすさなどから愛犬にピッタリなものを探してみるのも良いかもしれません。
まとめ
ステロイドは優秀な治療薬でありながら、病気を引き起こしてしまうこともあるということがお分かりいただけたでしょうか。
もし愛犬がステロイドを使用している時に皮膚の様子がおかしいと感じたら、迷わず動物病院を受診してください。
当院は皮膚疾患に関する豊富な経験と知識がございます。
どんな些細なことでも構いませんのでお気軽にご相談ください。
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