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犬の歯は全部抜いても大丈夫?|犬の全抜歯について解説します

2024.08.10

犬の歯は全部抜いても大丈夫?|犬の全抜歯について解説します

 

皆さんは犬の抜歯についてどれくらいご存知ですか?

近年は動物病院で歯磨きの重要性が啓蒙されていたり、ペットショップで販売されているグッズも充実しています。人と同じように犬でも歯を守ることは重要だと感じている方も多いことでしょう。
そうはいっても、歯磨きが難しかったり保護犬で歯磨きをしてこなかった犬では歯周病が進み、抜歯になるケースも多いです。

動物病院では、犬の歯を全て抜く手術を実施することもあります。

愛犬の歯がなくなることに対して

  • どんな手術をするのか
  • 今まで通りの生活を送れるのか
  • 食事は変えたほうがいいのか

など、ご家族にとってはとても不安ですよね。

今回は犬の抜歯についてご説明します。
抜歯について知ることで、愛犬の歯の健康についてあらためて考えていきましょう。

おやつを食べているトイプードル

 📍 目次

 ▼ 犬にとっての歯の役割
 ▼ 歯周病の歯を放っておくとどうなるの?
 ▼ 犬の抜歯方法
 ▼ 全ての歯を抜いても大丈夫なのか|抜歯後の生活について
 ▼ 予防について
 ▼ まとめ

犬にとっての歯の役割

人間は食事の時、噛むことで食感や味を楽しみます。

犬にとって歯はどのような役割を果たしているのでしょうか。

犬のルーツは肉食動物

現在、犬は雑食と言われていますが、起源はオオカミなどの肉食動物です。そのため口の形は肉を引きちぎって、丸呑みするのに適している形をしています。
人間のように咀嚼することはほとんどありません。犬にとっての歯は、丸呑みできるサイズに引きちぎることが主な役割です。

 

犬の歯は全部で42本

犬の歯は人と同じように、

  • サイズが小さくいわゆる前歯である切歯
  • 噛み切る役割を担う犬歯
  • サイズが大きく奥歯と言われる臼歯

からなります。
上下左右合わせて、切歯が12本、犬歯が4本、臼歯が26本あります。
人が全部で28本なので犬の方が多いですね。

 

抜歯が必要な歯ってどんな歯?

はじめに犬にとっての歯の役割についてご説明しましたが、抜歯が必要になるのはどのようなケースがあるのでしょうか。

代表的なものをご紹介します。

歯周病の場合

人間の歯は虫歯になりやすい一方で、犬は虫歯よりも歯周病が問題になるケースが多いです。歯周病というのは細菌の塊である歯石が歯の根元に溜まり、歯肉が後退したり歯の土台となる歯槽骨が溶けたりすることで、歯が動揺する原因となります。

歯が折れた場合

怪我などで歯が折れたり、欠けてしまったりすると抜歯が必要になることもあります。
歯は折れると歯の断面から歯の神経が剥き出しの状態(露髄)になってしまいます。
基本的には歯の神経を抜いて修復する治療を行いますが、折れ方が深い場合、特に歯の根元(歯根)の破折の場合は歯を温存することは困難です。

その場合は抜歯を選択せざるを得ないということになりますね。
露髄した歯を放っておくと感染症になったり、痛みが出ることがあります。 
歯が欠けた犬

欠けた歯を整復した犬

噛み合わせが悪い場合

犬では子犬の頃に生えていた乳歯が抜けずに残ってしまうことがあります。これを乳歯遺残といい、犬では特に上顎の犬歯が残りやすいです。

残したままにしておくと、通常通り生えてきた永久歯とかなり近接してしまうため、間に食べ物が残りやすく、口臭や歯石の原因となります。
犬の歯を見る獣医師

 

歯周病の歯を放っておくとどうなるの?

ご家族にとって大切な犬の歯、なるべくなら抜歯したくないですよね。

歯周病では軽症の場合は口が臭う、歯石がついていて見た目が気になるなどの症状のみの場合もありますが、重症になると犬の生活に大きく影響するような症状が出ることがあります。

ここでは抜歯が必要になるような歯周病により起こる症状についてご説明します。

皮膚に穴が開く、腫れる

歯周病では歯の根元に細菌の塊である歯石が溜まります。その細菌が歯の根元に侵入して炎症を起こし、腫れたり膿が出たりします。
歯の根元で膿が増えると、最終的に皮膚を突き破って膿が出てくることで、皮膚に穴が開いてしまいます。
歯周病はどの歯でも発生しますが、皮膚症状が出るのは上顎が多く、目の下に突然穴が開いて驚かれるご家族も多いです。
病院で傷の処置をして、抗菌薬を飲むと皮膚は再生しますが、歯の治療をしなければ再発します。

くしゃみ、鼻水

歯周病で増えた細菌が歯の根元で病巣を作ると、骨を溶かすこともあります。
上顎の歯は、鼻の骨のとても近くに存在しています。鼻との境目の骨が溶けてしまうと、食べたものが鼻に入ってしまうようになり、それを外に出すためにくしゃみが出ます。鼻に食べ物が入ることで炎症を起こし鼻水がでることもあります。

顎骨骨折

歯周病の歯が下顎にある場合、下顎骨が溶けてもろくなることがあります。

小型犬のように下顎骨が細いと、歯周病による骨の溶解の影響が大きく、自然に骨折してしてしまうことがあります。下顎骨を骨折すると、痛みが強く出て食欲が低下したり、口が閉じられなくなります。

 

犬での抜歯方法

抜歯の前に、レントゲン検査を行い、歯の根元に病変がないか、土台となる骨は健常かなどを確認します。
全身麻酔下で歯石を除去し、歯の動揺の有無などを最終確認し、抜歯の適応となる歯かどうか入念に確認したうえで、抜歯を行います。
抜歯と言っても、無理やり引っこ抜くことはありません。
丁寧に歯肉と歯の接着を引き離して、土台に埋まっている歯を脱臼させて抜歯します。
臼歯のように大きく、根が複数あるような歯はそのまま抜歯するのは困難です。その場合、ドリルで2〜3分割させると、他の歯と同じように抜歯することができます。
大きな歯が抜けると、歯肉に残る穴も大きくなるので、歯肉を少し剥がして縫い合わせます。

 

全ての歯を抜いても大丈夫なのか|抜歯後の生活について

歯周病で歯を数本抜いた場合でも、生活に支障がないのは何となく予想がつくのではないでしょうか。

では、すべての歯を抜いてしまうとどうなるのでしょうか。
その答えは、犬は食べ物を咀嚼せず丸呑みするため、通常歯が1本もなくても犬の生活にほぼ支障はありません、です。

手術直後は痛みや腫れが出ますが、抗生剤や鎮痛薬が処方され、短期間で治ることが多いです。
全抜歯後の犬の生活についてご家族が心配されることの多い点をご説明します。

 

外貌の変化

全ての歯を抜くと、犬の見た目が変わることもあります。
特に下の歯は舌を口の中に留めておく役割も果たしています。全ての歯がなくなると、舌を口腔内に維持できず、舌が口から出っ放しになってしまうことがあります。

全抜歯後の犬

食事の変更は必要ないことが多い

術後数日間は、傷口に固いものが触れると痛みでるため、ウェットフードやふやかしたドライフードなど柔らかいフードにした方が良いでしょう。

しかし、全て抜歯していても手術から数日経つと、ドライフードのように小さいものは問題なく食べることができるので、普段通りの食事で良い場合が多いです。
術前まで歯周病の痛みがあった場合、痛みがなくなったことにより食事量が増えるケースもあります。

棒を噛む犬

 

予防について

歯周病の最大の予防は毎日の歯磨きです。

食べ物が歯に残らないよう毎日歯磨きを徹底することで犬の口を清潔に保てます。
毎日歯磨きをすると口の中の出来物や怪我などに早く気づいてあげることもできます。
どうしても歯磨きを嫌がってしまう犬には、歯周病予防に配慮したフードもあります。
歯磨きがベストではありますが、どうしても歯磨きができない場合などで補助的に使うのは有効でしょう。
歯が折れることを予防するにはおもちゃの見直しが必要かもしれません。骨などの固いおもちゃは歯が折れてしまうだけでなく、丸呑みすることで口の中を怪我することもあります。

 

まとめ

ここまで、抜歯の必要性や手術方法、術後の注意点など、犬の抜歯についてご説明しました。

犬は歯を全て抜いてしまっても生活に支障はなく、食事も変更は必要ないことが多いです。

抜歯することで、くしゃみや鼻水などの歯周病の症状が改善し、痛みから解放されることもあります。

当院では歯周病などの歯科疾患の治療に力を入れています。
ぜひ犬の健康維持のために、定期的に獣医師の歯の診察を受けにきてください。

 

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