
「うちの子の被毛が最近薄くなってきた気がする」
「被毛が抜けているところがあるけど、何かの病気なのかな」
このように感じている飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。
犬の被毛が広い範囲で抜ける病気のひとつに、アロペシア(脱毛症)Xがあります。
今回は、サプリメントによる治療で、アロペシアXによる脱毛の改善がみられたポメラニアンの症例をご紹介します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の被毛の変化と向き合うためにお役立てください。
症例紹介
| 動物種 | 犬 |
| 品種 | ポメラニアン |
| 主な皮膚症状 | 体幹部の脱毛(頭部・四肢の被毛は残っている) |
| 来院理由 | 被毛が抜けているため |
| 診断 | アロペシアX |
| 治療方針 | サプリメントの投与 |
| 治療期間 | 4か月 |
| 治療結果 | 体全体の被毛がふさふさに戻った |
実際の症例
今回ご紹介する症例は、体の被毛が広い範囲で抜けてしまったという10歳のポメラニアンです。
来院理由
今回の症例は、被毛が抜けているという主訴で来院されました。
ふさふさだった被毛が抜け始めて、次第に範囲が広がってしまったため、飼い主様は非常に心配されていらっしゃいました。
初診時の状態
初診時、頭と手足には被毛が残っている一方で、体幹部の被毛はかなり抜けている状態でした。
飼い主様は、ふだん服を着せることで、脱毛している部分を隠しているとのことでした。

検査・診断結果
まず被毛の検査を行うと、成長が止まっている被毛ばかりであることがわかりました。
また、血液検査やエコー検査などによって、ホルモンの病気など、脱毛症を起こす他の病気ではないことを確認し、アロペシアXと診断しました。
治療方針
今回の症例の治療として、海藻から作られた犬用のサプリメントによる投与を開始しました。
サプリメントによる治療は副作用が少なく、飼い主様にも受け入れられやすい治療法です。
治療後の経過
治療開始2か月後には、体の側面部に被毛が生えはじめましたが、お尻まわりの脱毛はまだ目立つ状態でした。
治療開始4か月後には全身の被毛がふさふさになり、見違えるほどの変化がありました。
飼い主様も大変喜ばれていました。
最初は飼い主様も半信半疑で治療に取り組まれておりましたが、諦めずに治療を続けられて本当に良かったです。

今回のように、アロペシアXは治療を長く続けることで、被毛の状態が改善することがあります。
ここからは、アロペシアXの原因や症状、診断・治療法について解説します。
アロペシアXとは
アロペシアXは、ポメラニアンの毛が抜ける病気として一般的です。
原因は不明ですが、被毛が生えかわる毛周期(もうしゅうき)が止まってしまうことで起こります。
このため正式には毛周期停止症と呼ばれていますが、アロペシアXと通称で呼ばれることが多いです。
とくに以下の犬種は、この病気の好発犬種です。
- ポメラニアン
- トイ・プードル
ただし、これら以外の犬種でも発生する可能性はあります。
アロペシアXの原因
アロペシアXは、何らかの理由で毛周期が止まってしまうことで起こると考えられていますが、はっきりとした原因はわかっていません。
特定の犬種に発症が集中していることから、生まれつきの体質が関係しているのではないかと考えられています。
アロペシアXの症状
アロペシアXでは、頭部と四肢を除く体幹部を中心に脱毛が起こります。
とくに以下の部位から脱毛が始まることが多いです。
- 尾
- 太もものうしろ側
- 首まわり
これらの部位から脱毛が始まり、時間の経過とともに広がっていくことが特徴です。
また、被毛が抜けた部分の皮膚は、乾燥してバリア機能が弱くなりやすく、常在菌による感染症を起こすこともあります。
見た目の変化に驚かれる飼い主様も少なくありませんが、アロペシアXは脱毛や皮膚のトラブル以外には、体調を崩すことがない病気です。
命にかかわることはなく、見た目の変化にとどまる美容上の問題として知られています。
アロペシアXの診断
アロペシアXの診断では、まずは症状の経過と分布を確認した上で、被毛を顕微鏡で観察し、成長の止まった被毛ばかりであることを確認します。
また、血液検査や画像検査によって、ホルモンの病気などの脱毛を起こす他の病気を除外することが診断に重要となります。
アロペシアXの治療法
アロペシアXの確立された治療法は見つかっていませんが、以下のような治療が効果を示したことが報告されています。
- 薬による治療
- サプリメントによる治療
- マイクロニードルによる治療
いずれの治療も効果には個体差がありますが、数か月継続することが大切です。
また、発毛が見られた場合であっても、治療を休止した途端に、脱毛が再発することもあります。
それぞれについて解説します。
薬による治療
薬による治療は、被毛の状態に関わるホルモンや栄養状態を整えることで、発毛を促す治療です。
比較的副作用が少なく、効果を示す報告がある薬として、以下のようなものがあります。
- 酢酸オサテロン
- L-システイン(アミノ酸)
- ビタミンE
- メラトニン
これら以外にも、トリロスタン、デスロレリンなど、ホルモン調整薬にも発毛効果の報告があります。
ただし、ホルモン調整薬は副作用が出る場合があるため、使用にあたっては定期的に受診をし、体調の確認、血液検査、ホルモン検査、尿検査などが必要となります。
サプリメントによる治療
サプリメントによる治療は、被毛の健康に必要な栄養素を補うことで、発毛を促す治療です。
以下のようなサプリメントで発毛した症例の報告があります。
- オメガ3脂肪酸
- パントエア糖脂質
- 5-ALA(5−アミノレブリン酸)
- プレ・プロバイオティクス
今回ご紹介した症例では、海藻由来の成分を含むサプリメントによる治療で被毛が回復しました。
マイクロニードルによる治療
マイクロニードルは、アロペシアXで脱毛した部分の皮膚に細い針で刺激を与えることで、発毛を促す治療です。
犬の皮膚に針を刺すときに痛みを伴うため、局所麻酔や全身麻酔が必要になります。

まとめ
アロペシアXは、頭部と四肢を除く体幹部の被毛が抜ける病気であり、ポメラニアンなどに多いです。
確立された治療法はまだ見つかっていませんが、サプリメントや薬によって発毛が見られることがあります。
愛犬の被毛が抜けてきたと感じたときは遠慮なく動物病院に相談しましょう。
サーカス動物病院グループでは皮膚科診療にも力を入れており、脱毛の症状についても経験豊富な獣医師が対応しております。
愛犬の被毛の状態が気になる飼い主様は、ぜひ当動物病院グループまでお気軽にご相談ください。
獣医師からのメッセージ:一人で悩まずにご相談ください
動物の皮膚科領域では、主要疾患の国際的な治療ガイドラインの作成が進み、治療の選択肢も年々広がっています。以前はコントロールが難しかった症例でも、最新の知見に基づいた適切な薬やスキンケア、食事や生活指導などの組み合わせによって、皮膚や被毛の状態を大幅に改善させ、愛犬とご家族が穏やかに過ごせる状態を取り戻すことができる可能性が十分にあります。
多くの動物病院は「総合科」としてあらゆる診療科を網羅しており、何でも相談できるという素晴らしいメリットがあります。一方で、獣医療の高度化に伴い、すべての科において最新の専門性を維持し続けることが難しいという側面も持ち合わせています。
サーカス動物病院グループには、アジア獣医皮膚科専門医が2名在籍し、専門性の高い皮膚科診療を行っています。「長年治療しているのに改善しない」「何が原因かはっきりさせたい」「スキンケアの方法を見直したい」とお悩みの飼い主様は、決して一人で抱え込まず、ぜひ当動物病院グループにご相談ください。
愛犬の皮膚の状態に合わせた最適なサポートを、一緒に考えていきましょう。
📱 WEB予約
💡 予約状況が確認でき、24時間いつでも受付可能なWEB予約がオススメです。





