犬の脂漏症はなぜ繰り返す?|原因や治療法を獣医師が徹底解説

#コラム #犬の病気 #病気や予防の情報 #皮膚科
投稿日:2024.10.25 更新日:2026.09.02
こちらを見ているアメリカンコッカースパニエル

「シャンプーをしたのに、愛犬の皮膚がすぐベタベタしてくる」
「フケの量が増えて、体をしきりにかいている」
そんな変化に気づいて不安を感じている飼い主様は多いのではないでしょうか。
こうした症状の裏には脂漏症(しろうしょう)という皮膚の病気が隠れている可能性があります。
脂漏症は繰り返しやすく、
「体質だから仕方ない」
と諦めてしまう方も少なくありません。
しかし、原因をきちんと突き止めて正しい治療を行えば、愛犬の皮膚を健康な状態に近づけることは十分に可能です。

この記事では、犬の脂漏症の原因から治療・ケアまでを獣医師が詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、脂漏症に対する理解を深めていただけると幸いです。

 📍 目次
 ▼ 犬の脂漏症とは?皮膚のターンオーバーとの関係
 ▼ 犬の脂漏症の原因
 ▼ 脂漏症の代表的な症状
▼ 犬の脂漏症の治療と自宅でのケア
 ▼ まとめ

犬の脂漏症とは?皮膚のターンオーバーとの関係

こちらに向かって走ってくるシーズー

犬の脂漏症とは、皮膚のベタつきやフケが慢性的に続く皮膚トラブルです。

脂漏症を理解するためには、まず「皮膚のターンオーバー」という仕組みを理解しておくことが大切です。
犬の皮膚では、表皮の深い部分で新しい細胞が生まれ、その細胞が少しずつ表面へ押し上げられ、最後に古い角質となって自然に剥がれ落ちていきます。
この一連の流れがターンオーバーで、犬の場合はおよそ3週間で一周するサイクルです。ターンオーバーが絶えず繰り返されることで、表皮は常に新しい状態を保つことが可能です。

このサイクルが正常に働いていると、皮膚は適度なうるおいと皮脂を保ちながら、外部の刺激から体を守るバリア機能を維持できます。
ところが何らかの原因でターンオーバーが短くなることで発症するのが脂漏症です。
脂漏症には大きく2つのタイプがあり、それぞれ見た目や特徴が異なります。
次に脂漏症の2つのタイプについて詳しくみていきましょう。

脂性脂漏症と乾性脂漏症の違い

犬の脂漏症は脂性脂漏症と乾性脂漏症の2つのタイプがあります。

脂性脂漏症は、皮脂の分泌が過剰になるタイプです。
皮膚や被毛がベタベタと脂っぽくなり、触ると手に脂がつくこともあります。
シャンプーをしても数日で独特の脂っぽいにおいが戻りやすく、被毛が束になって固まるのも脂性タイプによく見られる特徴です。

一方、乾性脂漏症は皮膚が乾燥し、細かく白っぽいフケがパラパラと落ちるタイプです。
被毛のツヤが失われてパサパサした質感になり、皮膚全体がカサついて見えます。
乾性脂漏症では皮膚のバリア機能が低下しやすいため、外部からの刺激に対して敏感になり、かゆみが出やすい傾向があります。

脂漏症を適切に管理する上では、

「うちの子はどちらのタイプか」

を日頃からチェックしておくことが大切です。

犬の脂漏症の原因

犬の脂漏症は、原因によって「原発性脂漏症」と「続発性脂漏症」の2つに大きく分けられます。
愛犬がどちらに当てはまるかによって治療の進め方が変わるため、この違いを知っておくことはとても重要です。

原発性脂漏症(生まれつきの体質)

原発性脂漏症は、生まれ持った体質が原因で起こるタイプです。
特定の犬種で起こりやすいため、遺伝的な要因が疑われています。

皮膚のターンオーバーや皮脂分泌に異常が生じやすく、幼い年齢から症状が現れ長期間にわたって続く傾向があります。
原発性脂漏症を起こしやすい犬種には、以下のような種類が挙げられます。

  • アメリカン・コッカー・スパニエル
  • ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
  • シー・ズー
  • バセット・ハウンド
  • ラブラドール・レトリーバー

ただし、これらの犬種にベタつきやフケがあっても、すべてが原発性とは限りません。
感染症やアレルギーなど他の原因を一つずつ除外して、初めて原発性脂漏症と診断されます。

続発性脂漏症(ほかの病気が原因で起こるもの)

続発性脂漏症は、別の病気が引き金となって発症するタイプです。
代表的な病気や要因には、次のようなものが挙げられます。

  • 犬アトピー性皮膚炎や食物アレルギー
  • 甲状腺機能低下症・副腎皮質機能亢進症などのホルモンの病気
  • 栄養バランスの偏り

特に気をつけていただきたいのは、
「以前は皮膚トラブルがなかったのに、急にベタつきやフケが増えた」

「ベタつきやフケ以外に強い痒みや皮膚炎がある、体調の変化がある」
という場合です。
中高齢になってから初めて症状が出たケースでは、ホルモンの病気が隠れていることがあるため、早めの受診をおすすめします。

脂漏症の代表的な症状

おもちゃを持ってこちらに向かってくるアメリカンコッカースパニエル

脂漏症では、皮膚のベタつきやフケだけにとどまらず、さまざまな症状が現れます。
代表的な症状は以下のとおりです。

  • 皮膚や被毛が脂っぽくベタベタする
  • 白〜黄色っぽいフケが目立つようになる
  • 皮膚が赤くなったり、ゴワゴワと厚くなったりする
  • 体をしきりにかく、足先をなめ続ける
  • 皮膚が黒ずんでくる(色素沈着)
  • 耳垢が増える / 外耳炎になる

また、こうした症状は以下のような皮膚のしわが多く、湿気がこもる部位に出やすい傾向にあります。

  • 顔まわり
  • 内股
  • 足先
  • お尻まわり


垂れ耳の犬や被毛が密な犬種は湿気がこもりやすいため、日頃から意識して観察しましょう。

脂漏症とマラセチアの深い関係とは?

脂漏症を考えるうえで、マラセチアとの関係は避けて通れません。
マラセチアとは、健康な犬の皮膚にもともといる酵母菌の一種(カビの仲間)です。
普段は悪さをしませんが、皮脂が増えたり皮膚のバリア機能が低下したりすると、マラセチアが爆発的に増えて皮膚に炎症を起こすことがあります。
マラセチアが増えたときには、以下のような特徴的なサインが現れます。

  • 強いかゆみと赤み
  • 皮膚が茶色〜黒っぽく変色する
  • 独特の発酵臭や油っぽいにおいがする
  • 外耳炎を併発する
  • 足先をしきりになめる

マラセチアは耳の中・指の間など、温度と湿度が高い部位で特に増殖しやすい点が特徴です。
ただし、症状だけで
「マラセチアが原因だ」
と断定することはできないため、正確な診断には動物病院での皮膚検査が欠かせません。

犬の脂漏症の治療と自宅でのケア

遠くを眺めるアメリカンコッカースパニエル

脂漏症の治療では、原因となっている病気への対応と、皮膚そのもののスキンケアを組み合わせて進めていきます。
「シャンプーさえすれば大丈夫」
と思われがちですが、アレルギーやホルモンの病気が関わっている場合には、それぞれに合った治療が欠かせません。

原因となっている病気の治療

続発性脂漏症の場合、背景にある病気を治すことが最優先です。
たとえば、犬アトピー性皮膚炎であれば抗アレルギー薬や体質改善、甲状腺機能低下症であればホルモン剤の補充といった形で、原因ごとに適した治療を進めていきます。
原因が残ったままシャンプーを続けても、一時的に皮膚がきれいになるだけで、しばらくするとベタつきやフケが戻ってしまうケースが少なくありません。

シャンプーによる洗浄

脂漏症のスキンケアにおいて、シャンプーは中心的な存在です。
シャンプーを行うことで、マラセチアのエサとなる皮脂やフケを除去できます。

皮脂やフケを効率的に取り除くためには、洗浄力の強いシャンプーが必要になるケースが多いです。
しかし、これらのシャンプーは皮膚への刺激が強い点に注意が必要です。
犬アトピー性皮膚炎など皮膚のバリア機能が著しく低下している病気を併発している場合は、かえって症状を悪化させてしまうこともあるため注意しましょう。
どのシャンプーを選べばよいかわからない場合は、低刺激性洗浄剤や入浴剤、保湿成分が配合されたシャンプーから始めるのがおすすめです。

また当院では、洗浄をシャンプーだけに頼るのではなく、ファインバブルシャワー、入浴や部分的なクレンジングオイルの併用をおすすめしています。

シャンプーの手順としては、まずぬるま湯で皮膚と被毛をしっかり濡らし、泡立てたシャンプーを皮膚全体にやさしくなじませていきます。
シャンプーで洗浄した後は丁寧にすすぎましょう。
すすぎ残しはかゆみや炎症の原因になるため、脇や内股などしわの部分は念入りに洗い流すことも大切です。

基本的には犬用の製品を使い、種類や頻度は獣医師の指示に従いましょう。

保湿ケア

脂漏症の犬は、皮脂が多いように見えても、実は皮膚の内側の水分が足りていないケースが少なくありません。
シャンプー後に保湿剤を塗ると、皮膚のバリア機能を補い、乾燥による刺激を和らげる効果が期待できます。
皮膚が乾くと体は
「もっと皮脂を出さなければ」
と反応するため、保湿ケアには皮脂の過剰分泌を抑える役割もあります。

保湿剤にはローションやフォームなど洗い流さないタイプもあるため、愛犬のベタつき具合や乾燥の程度に合わせて選びましょう。

薬物療法

薬物療法として用いられる薬には、おもに以下のようなものがあります。

  • 炎症や皮脂分泌を抑える作用を持つ薬
  • マラセチアの増殖を抑える薬

これらの薬は、シャンプーや入浴などの外用ケア・保湿といった治療で十分な改善が得られないときや、症状が重度なときに使用されます。
薬の種類や投与期間は愛犬の状態によって異なるため、獣医師の判断のもとで慎重に進めていくことが大切です。

自宅でできるケアと環境管理

動物病院での治療と合わせて、毎日の暮らしの中でのケアも脂漏症の経過に大きく関わってきます。
飼い主様に心がけていただきたいポイントは、おもに以下の4つです。

  • 高温多湿を避ける:室温25〜28℃・湿度40〜60%を目安に整え、夏場はエアコンや除湿機を活用しましょう。
    冬場に乾燥でフケが増える犬には適度な加湿も大切です。
  • 寝具や衣類を清潔に保つ:ベッドや毛布には皮脂・フケがたまりやすいため、定期的に洗濯しましょう。
    洋服を着せている場合は長時間の着用で蒸れないよう、こまめに脱がせて皮膚をチェックすることも重要です。
  • バランスのよい食事を与える:年齢や体格に合った総合栄養食を主食にしましょう。
    乾性脂漏症では必須脂肪酸を豊富に含んだ食事への変更、ビタミンA・Eや亜鉛の補給が有効です。
  • 適正体重を維持する:肥満になると皮膚のしわが深くなり、脇や内股が蒸れやすくなります。
    体重管理も脂漏症の再発予防につながります。

こうした日々の積み重ねが、動物病院での治療効果を高め、愛犬の皮膚を良好な状態に保つ土台となります。
環境整備や食事に少し意識を向けるだけでも、脂漏症の再発リスクを減らすことにつながります。

まとめ

犬の脂漏症は、皮膚のターンオーバーや皮脂分泌の乱れによってベタつき・フケなどが繰り返される皮膚トラブルです。
脂漏症では、原因に応じた治療と毎日のスキンケアを組み合わせることが改善への近道となります。
シャンプーだけに頼るのではなく、保湿・環境管理などを含めた総合的なケアを続けることが愛犬の皮膚を健やかに保つ鍵です。

サーカス動物病院グループでは皮膚科診療に力を入れ、飼い主様が気軽に相談できる環境を整えています。
気になる症状がある場合は、お早めにご来院ください。

犬の脂漏症に関するQ&A

Q.犬の脂漏症は、ほかの犬や人にうつりますか?

A.脂漏症そのもの、脂漏症で増えたマラセチアがほかの犬や人に感染することは、基本的にありません。

Q.脂漏症の犬には、どのくらいの頻度でシャンプーすればよいですか?

A.シャンプーの適切な頻度は、症状の程度や使用する製品によって変わります。
洗いすぎは皮膚を乾燥させて、かえって症状を悪化させるリスクを伴います。
頻度は獣医師と相談しながら、愛犬の皮膚の状態を見て調整していくことが大切です。

Q.犬の脂漏症に、人用のシャンプーを使っても問題ありませんか?

A. 人用のシャンプーは犬における効果や安全性を調査していないため、基本的には犬用の製品をご使用されることをお勧めします。
犬用の薬用シャンプーにも多くの種類があるため、愛犬に合った製品を獣医師と一緒に選びましょう。

Q.シャンプーをしても、すぐにベタつきが戻るのはなぜですか?

A.ベタつきがすぐに戻る場合、洗い方の問題だけでなく、アレルギーやホルモンの病気といった根本原因が残っている可能性があります。
また、洗浄力が強すぎるシャンプーで皮膚のバリアを壊してしまい、体が皮脂を過剰に出そうとしているケースも考えられます。
短期間で症状が再発するときは、シャンプーの見直しだけでなく原因そのものの再評価が必要です。

Q.犬の脂漏症は完治しますか?

A.脂漏症は多くの場合、長期間の管理が必要となり、特定の治療によって完治することは稀です。遺伝的な原発性脂漏症や慢性のアレルギー疾患が背景にある場合は、「完治」よりも「再発を抑えながらよい状態を長く保つ」ことが治療のゴールです。
愛犬に合った治療や通院のペースを獣医師と一緒に見つけ、無理なく続けられるケアの習慣を作っていきましょう。

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