「アトピーの治療しているのに痒みが良くならない」
「皮膚がいつもしっとりしていて臭いが気になる」
「毛が束になっていてフワフワ感がない」
このようなお悩みがある犬の飼い主様も多いのではないでしょうか。
犬アトピー性皮膚炎の治療を続けているのに症状が改善しない場合、他の疾患が併発している可能性があります。
例えば、多汗症は犬アトピー性皮膚炎の症状を悪化させる要因となるため、それぞれの疾患を考慮した適切な治療が欠かせません。
今回は、犬アトピー性皮膚炎と多汗症が併発したポメラニアンで、治療法の見直しによって劇的な改善がみられた症例について解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の皮膚トラブルの理解にお役立てください。
| 📍 目次 ▼ 犬アトピー性皮膚炎と多汗症 ▼ マラセチアとの関係 ▼ 実際の症例 ▼ まとめ |

犬アトピー性皮膚炎と多汗症
犬アトピー性皮膚炎と多汗症は密接な関係があります。
ここからはこれら二つの関係について解説していきます。
犬アトピー性皮膚炎とは
犬アトピー性皮膚炎は、環境中のアレルゲンに対して体が過剰に反応することで起こる慢性的な皮膚疾患です。
強い痒みを伴う皮膚炎が特徴的で、炎症により皮膚のバリア機能が低下します。
遺伝的に
- 柴犬
- シー・ズー
- フレンチ・ブルドッグ
などに多く見られます。
若齢で発症するケースが多く、発症すると生涯にわたる管理が必要です。
犬アトピー性皮膚炎は、目や口の周り、耳、脇の下、足先や指の間などに症状が出やすく、痒みのある部分を頻繁に掻いたり舐めたりする行動が見られます。
症状が進行すると脱毛や皮膚の肥厚、色素沈着などが生じることもあります。
多汗症とは
多汗症は、汗の分泌が過剰になる疾患です。
犬は人のように汗をかくことはありません。
しかし、犬の全身にはアポクリン汗腺が分布しており、通常は少量の汗を分泌しています。
多汗症になると、この分泌量が異常に増加し、皮膚がしっとりと湿った状態が続きます。
湿った状態の皮膚表面では菌が繁殖しやすくなり、皮膚炎や痒み、独特の臭いを発するようになることもあります。
遺伝的に
- ヨークシャー・テリア
- ミニチュア・シュナウザー
- ポメラニアン
などに多く見られ、若齢から症状が現れやすい傾向にあります。
両疾患の関係
犬アトピー性皮膚炎と多汗症は併発することがあり、互いに症状を悪化させ悪循環を生み出します。
まず、犬アトピー性皮膚炎による慢性的な炎症は、汗の分泌を増加させることがあります。
さらに、皮膚表面が湿った状態が続くとマラセチアなどの微生物が増殖しやすくなり、犬アトピー性皮膚炎の痒みや炎症を悪化させます。
マラセチアは皮膚に常在する酵母菌(カビの一種)ですが、異常増殖すると皮膚の状態を悪化させる要因になります。
多汗症が併発していると、犬アトピー性皮膚炎の治療がうまくいかないケースも珍しくありません。

治療と管理
犬アトピー性皮膚炎と多汗症が併発している場合、それぞれの疾患を考慮したアプローチが必要です。
「薬を飲ませているのに良くならない」という場合、治療法が症状に合っていない可能性があります。
ここでは併発例に適した治療の考え方を解説します。
犬アトピー性皮膚炎の治療薬|多汗症併発の場合の懸念点
犬アトピー性皮膚炎の治療では、まずステロイドにより炎症を抑えることが基本となります。
ステロイドは炎症を素早く抑える効果があり、有効な選択です。
しかし、多汗症が併発している場合は十分な効果が得られないこともあります。
ステロイドには汗の分泌を抑える作用がないため、湿った皮膚環境の悪化サイクルは続いてしまうからです。
シクロスポリンという選択肢
犬アトピー性皮膚炎と多汗症が併発している場合にひとつの選択肢となるのが、シクロスポリンという免疫抑制剤です。
シクロスポリンには「炎症を抑えて痒みを軽減する効果」に加え、「皮膚炎から生じる過剰な皮脂や汗の分泌を抑える効果」も期待できます。
シクロスポリンは、犬アトピー性皮膚炎と多汗症の両方にアプローチできるため、併発例では特に有効な選択肢となります。
スキンケアの重要性
薬物療法と並んで重要なのが、適切なスキンケアです。
シャンプーで皮膚を清潔に保ち、洗浄後に適切に保湿することは、どの皮膚炎にも大切です。
ただし、シャンプーの種類や頻度、クレンジングオイルを併用するかなど、最適なケアは皮膚の状態によって異なるため、獣医師と相談しながら最適な方法を選ぶことをおすすめします。
特に多汗症は脂漏症と混同されやすく、強すぎる洗浄による皮膚へのダメージには注意が必要です。
実際の症例
今回紹介する症例は1歳のポメラニアンです。
来院時の状況
「犬アトピー性皮膚炎の治療をしているものの、痒みや皮膚の赤み、脱毛などの症状が残っている」という主訴で来院されました。
他院では、ステロイド内服薬と抗菌シャンプーで治療を行っていましたが、皮膚の状態は改善していませんでした。
来院時の身体検査では、皮膚に赤みと脱毛だけでなく、多汗症の症状も確認されました。
毛が濡れているかのように束になっており、ポメラニアン特有のフワフワとした毛質も失われていました。
診断と治療方針
皮膚の検査を行ったところ、マラセチアが増殖していることが確認されました。
症状から犬アトピー性皮膚炎だけでなく、多汗症の併発が疑われたため、飼い主様と相談の上、ステロイド内服薬からシクロスポリンに変更しました。
シクロスポリンは効果が出るまでに時間がかかるため、まずは1〜2ヶ月継続して経過を観察する方針としました。

治療経過
薬を変更して2ヶ月後、症状に劇的な改善が見られました。
(左:初診時 右:治療3ヶ月後)
毛の束がなくなりフワフワとした質感を取り戻し、多汗の症状も消失、脱毛部からの発毛も認められるようになりました。
皮膚の赤みも落ち着き、痒みによる掻き壊しもなくなりました。
現在も良好な状態を維持しており、薬の変更が劇的に病状を改善した一例となりました。
まとめ
今回は、犬アトピー性皮膚炎と多汗症が併発したポメラニアンの症例について解説しました。
犬アトピー性皮膚炎の治療薬には、多くの選択肢があります。
しかし、適切に用いなければ症状が改善しないケースも少なくありません。
特に互いに影響し合う疾患が併発している場合、それぞれの特徴を理解した上で適切な治療を選択することが大切です。
今回のポメラニアンのように、適切な診断とケアにより症状が劇的に改善できることもあります。当院では皮膚科診療に力を入れており、症例に合わせた治療プランをご提案しています。
愛犬の皮膚トラブルでお困りの際は、お気軽にご相談ください。
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